「フォンセカ・ビンテージ・ポート」83年



 名作「刑事コロンボ〜別れのワイン」の原題は"ANY OLD PORT IN A STORM"。主人公のワイン鑑定家が、ビンテージ・ポートが高温にさらされて劣化したことを見破る、というラストがポイントです。「あのワインが熱で駄目になったことを推理する能力のある人間はアメリカ中でも二、三人位しかいないでしょうからね」と主人公は最後に言うのですが、普通のワインなら少々飲用経験のある人なら熱劣化くらい分かるのでは? しかしポートは、発酵中にブランデーを加えた酒精強化ワイン。熱劣化にも強いみたい。マデイラという酒精強化ワイン(ポートとはぶどうと製法が異なるそうです。)などはわざわざ船積みして熱帯を回って熟成させたほどです。なにしろアルコール度20.5%、半分ブランデーみたいなものだし。
 他のワインと違ってビンテージ・ポートはブドウのできの良い年しか作らないそうです。10年の間に2〜3回以上ビンテージを宣言することは滅多にないとか。すごいこだわりですね。生産地はポルトガルですが、瓶詰めは英国で行われることも。ポートに葉巻が英国紳士のたしなみと言うわけ。う〜ん、なんてスノッブな……。
 「別れのワイン」に登場したポートはフェレイラの45年物。さすがにそんな年代物は手に入らないけど、せめて同じ「フェレイラ」が手に入れば……と思って探したんだけど、結局見つからず。そもそもビンテージポートを置いている所が少ないし。そこで代わりに購入したのが上の「フォンセカ」の83年物。黒い瓶に黒いラベルが格好良い。
 色はやや枯れたレンガ色。落ちついた色調は甘いお酒とはいえいかにも大人の物という感じ。香りはとにかく「強い」。ブランデーをかいでいるみたい。15年熟成はポートの分野ではまだまだ寝かせ足りないといったところ。20〜30年寝かせればもっと丸くなる……のでしょうね。さすがに手が届きそうにないけど。アルコールが強いから一本で十分持て余すほど楽しめます。うん、これ、ハマるわ。
 「刑事コロンボ」の大好きな先輩と飲んだのですが、いよいよ抜栓というときになって、大量の澱が溜まっていたのに驚き。なるほどデカンティングはポートにこそ欠かせない。残った澱は先輩の作ったシチューの中へ。さてさてお味の方は……?



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