8月


【音楽/書籍】吉松隆「作曲は鳥のごとく」(春秋社)
 普段聴く音楽と言えば、クラシックか映画音楽、そしてアニメーションのサウンドトラック。NHK大河ドラマの音楽などは、幼少期から親しんできたこともあって、本編は知らなくても音楽の方は殆ど揃えています。クラシック系の作曲家がオープニングタイトルを壮大な映画音楽風に仕上げていて、とても肌に合うのでした。山本直純作曲の「風と雲と虹と」や、林光作曲の「花神」、そして第一作「花の生涯」から始まる一連の冨田勲作曲作品。オープニングタイトルを映像付でまとめたテーマ音楽全集DVDなどもお気に入り。それだけに1983年の「琉球の風」には身もだえするほど腹が立ったものです。谷村新司には何の恨みもないが、せっかく琉球が舞台なのになぜ琉球の音楽を使わず、歌謡曲なんか持ってきたんだ? 頭がおかしいとしか思えない、と憤慨したものでした。
 さて、黎明期を彩った大御所達も代替わりして、最近では「おんな城主・直虎」「COWBOY-BEBOP」の音楽を担当した菅野よう子さんが担当したりと、新しい作曲家が参入してきてはいますが、意外に初期からのクラシックなスタイルを形を変えて維持していたりして良い意味で安心しています。しかし期待していた大御所のエンリオ・モリコーネ坂本龍一が、それぞれ「武蔵」や「八重の桜」の音楽を担当してくれたものの、正直大人しいというか本領発揮というまでいかない仕上がりに感じられてしまったのはちょっと残念。
 ここ10年の間で「夢中になった」音楽は、吉松隆さんが担当した、2012年「平清盛」の音楽。オープニングテーマはささやくような優しく緩やかなテンポでピアノ協奏曲風に始まり、やがて極端に激しくテンポの速いオーケストラで盛り上げる。いかにもクラシック音楽のスタイルなのだけれど、それまで聞いたことがない作曲家だったので興味を持ち、調べてみると交響曲なども作曲しているとのこと。さっそく購入しようと探して見ると、「CHANDOS」というこれもあまり聞いたことがないイギリスのレーベルで出ていたので、交響曲二番から五番まで購入。海外のCDなので解説は英語とフランス語とドイツ語で、日本人の作曲家で日本人の指揮者による演奏なのに、日本語はどこにも記載なし。実際に聴いてみると、とっつきやすい叙情的なメロディーで聴きやすいし、「アトム・ハーツ・クラブ組曲」のように親しみやすい題材の楽曲もあって、今さらながら日本語版がないのが不思議な気がしたものです。「交響曲第二番・地球にて」などは、いかにも竹宮恵子「地球(テラ)へ」に通じるタイトルで、第1楽章「東から」、第2楽章「西から」、第3楽章「南から」が、それぞれ東洋風、西洋風、アフリカ風の音楽となっているところなど、とても入りやすくて納得のいく面白い作品だと思うのですが、おそらくあまり知られていないような。どういう基準で大河ドラマのテーマ音楽の作曲家が選ばれているのか分かりませんが、少なくとも「琉球の風」の時とは違って、とても見識のある担当者が選んだに違いない、と勝手に思ったものです。
 さて、クラシックはまずは交響曲からと考え、ベートーベン、ブラームス、ブルックナー、マーラー、シベリウスは言うに及ばず、ニールセンやヴォーン・ウイリアムズに至るまで「交響曲全集」を揃えているいる私としては、当然吉松隆氏の交響曲も全作揃えたいと考えたものの、「第1番(カムイチカプ交響曲)」だけがどうしても手に入らない。どうやら絶版らしいと分かったものの、何とかならないかと気になっていたところ、データだけならi-Tunesで購入出来ると今さらながら知ったのでした。世の中では既に皆ディスクを棚に並べたりしないのね、と納得。さて、その第一交響曲ですが、各楽章が「地」「水」「火」「空」「虹」と名付けられていて、親しみやすさと叙情性を備えているところがなかなか魅力的なのですが、CD再発売されないですかね。
 「作曲は鳥のごとく」は、その吉松氏が自ら記した自叙伝。独学で作曲を学んだ著者らしく、作曲にまつわるさまざまな逸話が入っていて面白い。特に興味深かったのが著作権料の話。自作「朱鷺によせる哀歌」がNHKホールで2回、東京文化会館で1回演奏されたので、その使用料がいくら入ってくるのだろうとJASRACからの入金を待っていたら、その三回分の入金料の総額が7,800円……。コンサートのチケット料が5,000円するのに、作曲家に払われる使用料は1回2,600円だったのだという。いやモーツァルトもあれだけ作曲しても一曲分の対価は歌手の一回分にも満たなかったみたいな話は聞いたことはありますが、今も事情はあまり変わらないのですね。音楽文化とかよく滅びないものだなと思わず考えてしまいましたが、いやもう滅んでいるのに気付いていないだけなのかしら。


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