98年/今年のビデオ・ドラマ他鑑賞一覧


(◎:おすすめ ○:普通 △:今一つ)

<ビデオ>

「イレイザー」○

「マクロス・プラス」○

「レスリー・ニールセンのドラキュラ」△

「ラヂヲの時間」○

「ジョルジュ・S作品集」○
 大学時代から海外アニメーションが好きで、よく自主上映会などに足を運んだものです。ロシアやカナダの良質な手作りのアニメや日本の川本喜八郎を知ったのもこの頃。その後、ノルテンシュタインやクエイ兄弟、ヤン・シュヴァンクマイエルを知って夢中になったものです。最近はそれほど熱心ではなくなりましたが(年取ったせい?)、それでもアードマン・コレクションやニック・パークの「ウォレスとグルミット」なんか喜んで観に行きます。夜想34「パペット・アニメーション」でそこ  ら辺が取り上げられているのもうれしい限り。
 この「ジョルジュ・シュウッツゲーベル作品集」はたまたまイメージ・フォーラム・ビデオのコーナーに売っているのを見つけて購入したもの。最新作の「鹿の一年」が1995年制作だから、比較的新しい作家と言えます。内容的には、油絵のスケッチがめまぐるしくメタモルフォーゼしていくもの。8本の短編作品からなる40分のビデオで5000円はちょっと高いかも知れないけれど、買って良かったです。「オフサイド」はサッカー、バスケット、ゴルフと次々に変形していく作品ですが、シュワンクマイエルの「男のゲーム」を思わせます。口当たりはもっとマイルドですが、一人の男が最後にはどつき回されるというオチはなかなかにブラック。「フランケンシュタインの恍惚」や「78回転」「破滅への歩み」も優れたアイデアに満ちあふれた小品。「鹿の一年」も、善意があだになってしまうという、一言で済んでしまうような教訓話なのですが、セリフ一切なしの鮮やかな映像で綴られるとなかなかにインパクトがありました。

<ドラマ>

「ソムリエ」△
 SMAPの稲垣悟郎君主演で、漫画「ソムリエ」を原作としたドラマが始まった。最近のワインブームで、近頃めっきりワインが手に入らなくなったが、これでまた買いにくくなるなあ。去年「失楽園」などが始まる前に、奮発してシャトー・マルゴーを買ったけど……その時でも十分に高かったが、今年は倍出しても買えないほどである。リリースされたばかりの95年物で一本5〜6万円はするものなあ。さすがにもう手は出せまい。
 原作本は持ってて、結構読んでいるんだけど、舞台が日本に移ってからは少々今一……。でもちゃんと監修をつけて、ワインに関してはなかなか真面目に描かれているのでまあよしとするかな。第二話には無理に濡れ場とかあったりして編集の迷いが感じられるが……。
 しかしドラマの方は、なんか無理してコメディにしようとしているのでどうもなあ、という感じである。原作をてんで無視しているんだけど、その一部一部を拝借して当てはめているのでどーも違和感がある。飛行機でやってきたばかりの人間にヴァン・ショー(ホットワイン)を出すくだりは原作にもあるのだけど、その後衝動的に人質を取って教会にたてこもった男にシャトー・ムートン73年を勧めるというのは、矛盾してないかい? 前者には疲れていて味も分からないだろうからとホットワインを出しておいて、それ以上に興奮していて手の付けられないような人間にデカンテーションが必要なくらいデリケートなビンテージ物を出すなんて……。
 ちなみにちょっとご愛敬と思ったのは、前述でホットワインを飲まされるグルメ評論家は、同じフジテレビの深夜枠で昨年から今年にかけて放送されていた「わいんのばか」で、ワイン男爵を演じていた人でした。確かワイン男爵は、その深夜番組の中で、ムートンの73年は出来はそれほどでもない、と言っていたんではなかったかな?

「眠れる森」◎
 15年前の殺人事件に端を発する記憶と他者への執着を巡る物語。久々に録画チェックしてまでドラマを観たのは「沙庄妙子の最後の事件」以来である。今期のテレビドラマは他にも「タブロイド」や「世紀末の愛」等なかなかの秀作が揃っていたと聞いているが、何分忙しかったもので残念ながら他にはあんまり観ていない。
 真犯人は、結局は私が予想した通りだったが、これは登場人物に限りがあるのでそれほど意外でもないわけで、ミステリーとしてフェアかどうかということはあまり重要でもないし、魅力でもない。繰り返し描かれる記憶への固執、そして他者への執着。そこに主題がある。それこそ我々をもっとも苦しめるものだからである。
 恋愛ものに記憶喪失ものというのは、いかにもといった組み合わせだし、「眠れる森の美女」をモチーフとして展開した手法も定番と言えなくはないのだが、それでもこの物語に新しさを感じるのは、人の心の脆弱さ、いかに我々がはかない希望を頼りに生きているかということに目を向けさせてくれるからだろう。登場人物達は皆、もしかしたら望みがかなうかも知れないという想いを抱きつつ、頼りない一歩を踏み出す。そこには何の保証も根拠もないのに。彼らの取る行動は時に大胆であるにも関わらず、その心に一抹の弱さを抱えている。たとえ殺人者であっても……登場人物達は皆物語のどこかで涙を流している。拒絶されたが故の涙、希望が潰えたが故の涙、あり得たかもしれない平安な未来を失ったが故の涙。自分に何かが欠けている、何かが失われている、そう自覚するが故に、彼らは相手に対して異常なほどの執着を見せる。自らが死にそうになるほど、あるいは、相手を殺してしまいかねないほど。
 物語のトーンは一貫しているものの、出だしと結末とでがらりと印象が変わる。まるで万華鏡の様に。「生きる、生きる、生き続ける……」その希望を語った言葉が呪わしく感じられるほど、その作品の根底にある思想は厳しい。「伊丹十三が自殺し、新井将敬が自殺し、『失楽園』の二人は心中し、『HANABI』の二人も自殺する。これが世紀末の人間の姿なのか。危険きわまりない時代だ。どんなに悲惨な過去に苦しめられ、どんなに罪深い過ちを犯していようと、全てを引き受け、その人生を生きろ」脚本を担当した野沢尚は企画書を提示する際そう語ったというが、そこで単なる「がんばりましょう」の一言で終わらせずに、生き残ることの辛さ、生き残り続けることのおぞましさまでも描こうとしたことに、ある意味で強く共感を覚えた。

イベント

「徳川慶喜展」(三越美術館)

「三星展」(世田谷美術館)

「東郷青児展」(安田火災美術館)

「NHK 技術研究所展」

「ミュシャ展」(ギンザ・コマツ)

「永井一正展」(東京国立近代美術館フィルムセンター展示室)

 仕事の関係でデザイン会社の人と会った帰りに立ち寄ったのですが、平日だったし、雨も降ってたしということで、殆ど人もなく貸し切り状態で観ることができました。永井氏が「日本デザインセンター」の重鎮であったことは知っていたのですが、「札幌冬季オリンピック」や「沖縄海洋博」のシンボルマークを手がけた人だったんですね。うーん、そんなに偉い人だったとは。
 商業デザインの分野は、日本のレベルって相当高いと思うんですけど、その中心で活躍している人がなかなか表舞台に出て来ないような気がします。まあ、私の単なる認識不足なのかも知れないけど、なんだかもったいない。最近の動物をモチーフとしたポスターが中心でしたが、シンプルな描線にも関わらず強い印象を与えるなかなか見事な作品群でした。このタッチには言葉では説明できない魅力があります。



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