99/今年のイベント一覧


(◎:おすすめ ○:普通 △:今一つ)
<1月>
「新春ファミリー音楽会(あけてびっくりモーツァルト)」(板橋板橋区文化会館)
<2月>
江戸東京博物館「元禄繚乱展」○
江戸東京博物館は家の近くにあるのですが、意外と近いと足を運ばないものであります。
 NHK大 河ドラマの「元禄繚乱」に合わせての企画です。見所はやはり「仮名手本忠臣蔵」ですね。北斎もこの作品の場面場面を絵に残しているのですのですね。「忠臣蔵」は言わずと知れた仇討ちもの。もっとも始まりは浅野が吉良に切りつけ切腹を言い渡されたことなんですが……当時は喧嘩両成敗だから一方だけ責めるのはおかしい、ということなんだけど、現代の感覚で言えばいきなり切りつけてくる方が悪いのが当たり前で、吉良側に立てば切りつけられた上に一年後に首をはねられ家は取り潰されて踏んだり蹴ったりですよね。吉良上野介は模範的な領主だったという話ですから、結局忠臣蔵は杉浦日向子さんもマンガに描いていたように、爽快な物語と言うよりは単なる悲劇だったと思うんですけど。
<4月>
池袋サンシャイン「I LOVE SNOOPY展」
<5月>
水道橋「SF-セミナー」○
池袋サンシャイン「ウォレスとグルミット展」○

<8月>
三越美術館「ダリ展」○
東京IMAXシアター「エンカウンター3D」「T-REX」

<10月>
上野国立博物館「大顔展」
伊勢丹美術館「ダリ美術館展」
<11月>
劇団てぃんかーべる「魍魎の匣」
 泣く子も黙る京極先生の最高傑作の舞台化であります。場所は新宿シアター・モリエール。収容人数は100人程度で、小規模な公演でしたが、原作の人気を反映して劇場の外には長蛇の列。三時間半の長い舞台ということで、ホントに最後まで腰が保つかななどと心配していましたが……。
 劇団てぃんかーべるは女性ばかりで構成されたアマチュアの劇団で、年に一回公演がある程度、知人からの紹介がなければたとえ京極原作といえども足を運ぶことになったか怪しいものなのです。たびたび映画化の話もあったけれど、あの複雑なストーリーでは映像化どころか脚本だってまとまるまいと思っていたので、どんな展開になるのか半信半疑でした。
 けれども見終わってびっくり、まったく原作の味を損なわずしっかり三時間半にぴったりおさまり、まさに「傑作!」と思ってしまいました。ぎっしりと密度の濃い680ページの原作に余計な手を加えることなく、決め手のセリフはそのままに、内容に相応しい音楽に浸り、原作を読んでいるのにもかかわらず三時間半全く飽きさせませんでした。 とにかくこの手の「名作」の舞台化・映画化は、大抵において「余計なシーン」を入れることによって失敗します。原作通りにやるのは芸がないとか思って、作る側は大いに切り貼りに精を出してしまうのですが、原作に惚れ込んでいる者にとってはセリフの一つですら変えられると不快感を催すものです。この人はこんなことを言うはずがない、するはずもない、と思った途端にイヤになってしまうのです。 その点今回の劇は、ある場面に別の場面を重ね合わすことによって若干圧縮を加えているものの、重要なセリフを殆ど網羅していて、当然原作の語りが大幅に削られているのに、何処が省略されているのか分からなかった程でした。京極堂のしめくくりの言葉、「幸せになることは簡単なことなんだ。人を辞めてしまえばいいのさ」をそのまま語ってくれたのも有り難かったです。憧憬と諦観、執着と残虐とが入り混じるすさまじい物語の最後に添えられた、この何気ない突き放したような言葉に、京極作品のエッセンスが濃縮されていると思っているので。
 到底京極作品の映像化は無理だろうと考えていたのですが、今回の公演で認識を改めました。本当の意味でこれらの作品群を読み抜いている人達が集まれば、原作そのままのテイストの凄い映像作品に仕上げることも可能ではないでしょうか。今の邦画界の膠着状態を見るとはなはだ望み薄ではありますけど。ちなみに演じているのは皆女性なのですが、京極堂を演じた方がとくにずば抜けて巧かったです。失礼な話、本当に女性なのかなと思ってしまった。京極堂の持つ暗さと知性と格好良さを全て表現していたし、声の通りも素晴らしい。もし映画化の話があるのなら、イメージの付いてしまった下手な男優がやるよりこの方にやってもらった方がよっぽどいいぞ。
 しかし舞台を見て今更ながら原作の完成度の高さを再認識しました。言葉を少し変えただけでもその後の展開における意味が変わってきてしまう。脚本化するに当たって、言葉の変更を避けあくまで抜粋で構成したのは正解だと思います。もしかしてご本人が来ていたらサインでも……と思ってミーハーにも最新刊とマジックを持ってきていたのですが……。
 それにしても、この物語の最後の言葉にはいつも打ちのめされます。これからもどうやら幸せとは無縁の人生を送ることになりそうな我が身を振り返る時、この言葉はどこか慰めにも似た響きを持って私の心の中でささやかれるのです。
<12月>
劇団SERAPH!「SEVENTH HEAVEN」○  
「美しい王子様のお妃選びの舞踏会、諸事情あって参加する着飾った娘たち、諸事情あって参加しない着飾った娘たち、それから諸事情問わず着飾れない少年A、全てを掌握する王子と、姿を見せない王の本当の目的は?」
 このなかなかそそられるあおり文句の舞台は、池袋のコミニティカレッジのお知り合いの尾山さんの脚本によるオリジナルSF劇。ファンタジックなシンデレラストーリーに始まり、壮大な神の子と天使の転生劇に終わるこの話は、ミレニアムにもクリスマスにも相応しい、まさにタイムリーな展開でした。実際、最初から最後まで笑いがあって楽しめました。 特に良かったのはひときわ目立つ「道化」と、出番は少ないけどただならぬ雰囲気を漂わせた「王」かな。尾山さん自身も若き科学者フランシスで出演していますが、なかなか個性的なキャラクターで、もっと出番があってもいいのにと思いました。
 考えてみればこの世紀末、「エンド・オブ・ディズ」を始めとした不安と恐怖を題材にした作品は多いけど、もっと真っ正面からキリスト生誕2千年を祝福するようなお話があっても良いはずですよね。次回の公演は来年12月「NIDNIGHT MINE」ですとか。うーん先は長いけど、楽しみです。
安田火災東郷青児美術館「ロー・コレクション」

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