「ビネール・ブラン・ド・ノワール」2006年


 


 年10回程度の割合で開催しているワイン会「Via Vino」、様々なレストランにお世話になっていますが、中でも異色なテーマに果敢に取り組んで下さるのが東京駅近くの「エスカール・アビタ」さんです。今までも「ワインと戦争」「ピノ・ノワールの饗宴」など、通好みの企画に協力して頂きましたが、今回からお店自らワイン会を主催し始められたのでした。第1回のテーマはなんと「ピノ・ノワール」!
 昨年11月にやったテーマですね、と思いきや、そこはこだわりの強いソムリエの味岡さんのセレクト、かなり個性的なアイテムが並んだのでした。
 ピノ・ノワールの代表的な生産地であるブルゴーニュは敢えて外し、シャンパーニュ、アルザス、ロワール、そしてドイツのバーデンにオーストラリアのタスマニアと、思わずにやりとしてしまうラインナップ。
 ミッシェル・アルノーのシャンパーニュ・ブラン・ド・ノワールはともかく、ラングドックの「ドメーヌ・ガランヌ"かぜ"」は、文字通り日本語の文字が…ミストラルという冷たい風が吹く地域であることから名付けられたそうですが、ファースト・ビンテージとなる2008年はそもそも暑い年で風が吹かなかったとか。樹齢は8年と若く、どちらかというとグルナッシュを思わせるフルーティさと濃厚さがあり、以前こちらのお店でしっかりグルナッシュと間違えたワインです。ロワールからは、名門テュエリー・ピュズラの作る自然派ピノ・ノワール。独特のグリーンアップルを思わせるビオ香あり。バーデンのフーバー・シュペートブルグンダーは明るいルビー色をしたクリアなワインで、タスマニアのタイマー・リッジはピノ・ノワール独特のストロベリーの香りが印象的でした。
 そして何よりも驚いたのが、アルザスの作り手、クリスチャン・ビネールの作るブラン・ド・ノワールです。すなわちピノで作った白ワイン! ビネール家は1770年創業の老舗で、無農薬・二酸化硫黄不使用の自然派でもありますが、今年初めてリリースしたというこのピノの白は、日本にはわずか60本程度しか入っていないレア物だそうです。
 果たしてどんなものかと思って実際に味わってみると…やや琥珀色に近い濃い色調で、重たい香りとやや控えめな酸はどちらかというとピノ・グリを思わせます。アルコール度は14.5%と高く、非常にフルボディなスタイル。酸が重要とされるピノ・ノワールの白が、ここまで酸が低く感じられるというのも意外でしたが、親戚の品種であるピノ・グリと似ている点は何となく納得できるような気も。ピノ・ノワールの白などシャンパーニュのブラン・ド・ノワールしかないと思い込んでいた私にとっては驚きでしたが、ワイン世界の懐の深さを感じされる一品でありました。



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