Via Vino No. 100 "Via Vino Look Back"   
<ルックバック>


<日時・場所>
2025年2月16日(土)12:00〜15:00 新宿「リストランテ・ベニーレ・ベニーレ」 
参加者:34名
<今日のワイン>
 辛口・白・発「ランソン・ブラックラベル・ブリュット」
 辛口・白「ドメーヌ・ユエ・ヴーヴレ・ル・モン・セック 2022年」
辛口・赤「ジョセフ・ドルーアン・コート・ド・ボーヌ・ルージュ 2021年」 
辛口・赤「シャトー・ブラネール・デュクリュ2020年」
辛口・シェリー「ウィリアムズ&ハンバート・ドン・ソイロ・アモンティリャード15年」
甘口・ポート「グラハム・マルヴェドス・ヴィンテージ 2004年」  
<今日のディナー>  
 
スモークサーモン/カルパッチョ/江刺りんご ミスティカンツァ 
いわて短角牛/ラザニエッテ/大島トマトピューレ
鯛/ブーロビアンコ/柚子
黒毛和牛ブラッサート /赤ワイン/八幡平実山椒
いわて地鶏卵 ”黄金の里” オレンジ/ジンジャー/ティラミス

 

     


 今回は「100回記念!」ということで、第1回からの会の概要を、順を追って解説していきました!

1.No.1~20.「旧世界から新世界まで」

 この会は、まずは主要生産地からということで、フランス、イタリア、スペインのワインから始めました。フランスワインでは「格付け」が重視されますが、その厳しさこそがワインの評価を揺るぎないものにしてきました。一方基準から逸脱することも多いイタリアワインでは、国家以上に「家族」の結びつきが重視され、実際多くの名家が、地域を越えた幅広い活動を行っています。そしてスペインでは、ピカソの作品や「エル・ブジ」の料理に見られるように、より強い「個性」へのこだわりが見られるように思うのです。そしてアメリカやニュージーランド、南アフリカなど、旧世界とはまた違ったアプローチで名乗りを上げているワイン産地も無視できません。私が最初に取得した海外の資格も、米国のエデュケーター協会CWEで、その時の授賞式の模様も会で紹介しました。



「ランソン・ブラックラベル・ブリュット」  (タイプ:白・辛口・発泡性・NM、品種:ピノ・ノワール50%+シャルドネ35%+ピノ・ムニエ15%、産地:フランス/シャンパーニュ/ランス)
 ランソンは、1760年ランスの行政長官フランソワ・ドゥラモットにより設立された「ドゥラモット・シャンパン・ハウス」が前身となります。ラベルとコルクには十字のマークが刻まれており、これは創設者フランソワ・ドゥラモットの息子が聖マルタ騎士団に所属していた事に由来しています。マロラクティック発酵を行わない数少ないシャンパンメーカーのひとつでもあり、トーストのニュアンスに加え、さまざまな花の蜜の香りがあり、洗練された味わいとなっています。


2.No.21~40.「ワインと戦争、アート、映画」

 ある意味もっとも力を入れた、そしてこの会ならではのユニークな企画が「第16回・ワインと戦争」でしょうか。実際のところ、元ネタは「ワインと戦争」(飛鳥新社)という一冊の本なのですが、ローラン・ペリエ、ドメーヌ・ドルーアン、ユーゲル、ユエといったよく知られたワイン生産者達が、苦しい戦争の時代にいかに奮闘したかが活き活きと描かれていて、強く印象に残ったのです。それまで只の銘柄に過ぎなかった「造り手」を、運命に抵抗して前進していく、個々の人間として感じられるきっかけとなりました。そしてさらに興味は近代戦争へと移り、イスラエルやレバノン、ジョージアといった、ワイン発祥の地でありながら、今に至るまで紛争の絶えない地域のワインにまで関心が広がりました。一方で、どうせならもっと楽しいお話もということで、アートや映画もテーマに選びました。世界各国で作られている酒として、いわく付きのエピソードが沢山あることも、ワインの魅力の一つでしょう。         


ドン&ベティ・クラドストラップ「ワインと戦争」(飛鳥新社2003年)

 第2次大戦下のフランス……ドイツ軍は生産者達を押さえつけるために、各地に「ワイン総統」と呼ばれるドイツ人の専門家達を派遣しました。最高級のワインを隠し通そうとする生産者達のごまかしを見抜くことが、彼らの使命だったのです。 
 

 ドイツ軍の捕虜となり、収容所で五年を過ごしたガストン・ユエ。彼は皆を元気づけるために、大胆にも収容所所長を強請って、所内でワインパーティを開くことを認めさせます。それは毎月1人1枚配られる荷物切符を使って、捕虜達に少しずつ故郷から送ってもらうというものでした。様々なアクシデントを乗り越えて、ついに1943年1月、聖ヴァンサンの日に、1人1杯分、およそ600本のワインを調達することに成功するのです。「あのパーティがなかったら、私たちはどうなっていたか分からない。それで生きる力が湧いたんだ。それは実にすばらしかったし、私が今までに飲んだ最高のワインだった」

 そして、戦争のさ中……彼らの間にも友情が生まれます。 ブルゴーニュに派遣されたセグニッツは、生産者ドルーアンのために便宜を図ります。1943年、オスピス・ド・ボーヌの500年祭が開かれました。「君達は好きなように祭りを開いて構わない。ドイツ人は一人も出席しないだろう。私がそれを約束する」 セグニッツがそう言うと、ドルーアンは答えます……。

 ワインの生産者というと、単なる銘柄の情報として考えてしまいがちです。しかし、そもそもワインを造るのは一人一人の人間なのです。自らの意志で試練に立ち向かいながらワイン造りを続けていく……この「ワインと戦争」に記された数々のエピソードは、まさにワインは人が造るものなのだ、ということを今さらながら教えてくれたような気がしました。今回はその中から、「第16回・ワインと戦争」でも紹介したワインを用意しました。

    

「ドメーヌ・ユエ・ヴーヴレ・ル・モン・セック 2022年」  (タイプ:白・辛口 品種:シュナン・ブラン100%、産地:フランス/ロワール)
 ドメーヌ・ユエ社の歴史は、1928年に創始者であるガストン・ユエが、父親の療養のために訪れたヴーヴレの地で、小さな畑を購入したことから始まります。1987年からビオデナミ農法を採用しています。「ル・モン」は1957年に取得した畑で、土壌は粘土質が少なく、小石やシリカの含有量が多くなっています。状態の良い葡萄のみ手作業で収穫し、発酵は古樽で野生酵母のみを使用、マロラクティック発酵も自然に任せるのでノン・マロラクティックの年も多く、ミネラル感に富み、高い酸味と卓越した繊細さが味わえるワインです。

「ジョセフ・ドルーアン・コート・ド・ボーヌ・ルージュ 2021年」  (タイプ:赤・辛口、品種:ピノ・ノワール100%、産地:フランス/ブルゴーニュ)
 1880年、ブルゴーニュワインの中心地ボーヌに創立、以来140年間以上家族経営にこだわり、創業当時から受け継がれるテロワールへの信念を貫きワインを造っています。1976年より除草剤などの化学薬品は一切使用せず、1988年には本格的な有機栽培へ転換。2007年には全自社畑にビオディナミ農法が導入されました。ジョセフ・ドルーアン自慢の銘醸1級クロ・デ・ムーシュの若木(全体の60%前後使用)と自社畑2.6ha(ビオディナミ農法)からブレンドして作られた、エレガントなフィニッシュが心地よい究極のコート・ド・ボーヌに仕上がっています。


3.No.41~60.「ワインと文学、音楽」

 海外の多くの小説には、ワインが多く登場します。文字通りブラインド・テイスティングを扱ったロアルド・ダールの「味」という有名な短編もあり、「星の王子様」で知られるサン・テグジュペリの曾祖父は、同名の格付けシャトーの持ち主でした。そして、著名な作曲家もワインとの繋がりがあります。ハイドンは給料の一部をワインで受け取っていましたし、ベルクは「ワイン」というタイトルの曲を残しています。こういった名作に関連する美酒を味合うことができるのも、ワインならではの楽しみだと思います。

 今回は、「第42回・ワインと文学」で紹介した、ロアルド・ダールの短編集「あなたに似た人」の収録作「味」に登場するワインを取り上げました。


ロアルド・ダール「あなたに似た人」(早川書房)

 ワインの専門家、リチャード・プラットは、自分の家のワイン貯蔵室を自慢している資産家の友人の家に呼ばれ、共に食事をする。彼は友人の虚栄心に乗じて、ワインのブラインド・テイスティングを持ちかける。 「私がそのワインの素性を当てたら、君の娘を貰おう。その代わり、外れたら私の家と別荘を譲ろう……」。この非常識な申し出を、友人はなんと受け入れてしまい、さっそくブラインド・テイストが始まります!
「メドックのどの地区の産か? マルゴー? ちがう、マルゴーのあの強烈な芳香なし。ポイヤック? ポイヤックにしては、感じがやさしすぎるし、おとなしくて、なにか思いつめている。ポイヤックの酒だったら、もっと尊大なおもかげがあるはずだ。……この酒はちょっとばかり育ちが良すぎる。後味は、なかなか愛嬌があり、それに女性的で、サン・ジュリアン地区の葡萄酒を思わせる、あの愉しくて気持ちの良い性質がある。これは、サン・ジュリアン……」


「いや違った、タルボじゃない。タルボなら、こいつより、もうちょっとピリッとくる。いよいよ結論に近付いてきたぞ。こいつが1934年だとすると、こう睨んでいるんだが、タルボということはない。さてと、待って下さいよ、ベイシュヴェイユでもなければ、タルボでもない。だけど、その…、この二つに近いな、すれすれだ、この葡萄園は、二つのほぼ中間に間違いなし、さて、どこだ……?」
 さんざんもったいぶった挙げ句、男の出した答えは「シャトー・ブラネール・デュクリュ。とっても小さな、可愛いシャトー……」
 さてさて、果たしてブラインドテストの行方は……? というわけで、その「ブラネール・デュクリュ」を用意しました。


     

「シャトー・ブラネール・デュクリュ2020年 」  (タイプ:赤・辛口 品種:カベルネ・ソーヴィニヨン70%、メルロ22%、 カベルネ・フラン5%、プティ・ヴェルド3% 産地:フランス/ボルドー )
 ボルドー、メドックのサン・ジュリアン第4級に格付けされています。サン・ジュリアン村のワインは、繊細なタンニンと果実味のバランスが特徴的ですが、このシャトーの畑は内陸に位置するため、隣接するベイシュヴェルやデュクリュ・ボーカイユと比べても、よりボディの力強いワインに仕上がっています。全体的に輝きある深い紫色で、果実の凝縮感と豊富なタンニン、しっかりした酸がある複雑性の高いワインです。


4.No.61~80.「シェリー、ジビエ、すし」
 2012年にシェリー・エデュケーターの資格を取った関係から、毎年11月のインターナショナル・シェリー・ウィークでは、毎回形を変えてシェリーの会を開催しています。またこの頃は「シャンパーニュ」「ジビエとフレンチ」「すしとワイン」を繰り返し展開しました。広尾の「マノワ」さんや、銀座の「壮石」さんなど、食とワインにこだわりを持つお店との共同企画を進めることで、色々と知見を深めることができました。

     

「ウィリアムズ&ハンバート・ドン・ソイロ・アモンティリャード15年 」  (タイプ:辛口/アモンティリャード 品種:パロミノ100% 産地:スペイン/ヘレス アルコール度19% )
 全面にフロールを生じさせてできるフィノに対し、アモンティリャードは樽の上面の70-80%しかフロールが生じないものを更に時間をかけて熟成させています。「15年」の表示はソレラ・システムによる平均熟成年数を示しています。トパーズのような魅力的な色合いと、ほのかな甘さを感じさせる豪直な香りが特徴で、香ばしい風味と酸味が、その味わいを一層甘美に、かつ複雑なものにしています。


5.No.81~100.「ワインとミステリー」
 いつからワインに興味を持ったのか……小学校の時テレビで観た「刑事コロンボ・別れのワイン」。同様の体験を持っている人は意外に多いのではないでしょうか。漫画「ソムリエ」の監修を担当した堀賢一氏も、著書の中で同様のことを語っています。ミステリーとワインは非常に相性が良いようです。私もワインミステリーを何本か書いています。その中の一つ、ベルクのバイオリン協奏曲とワインをテーマにした「メモリー・オブ・エンジェル」(「第82回・メモリー・オブ・エンジェル」の回を参照)は、創元社「ミステリーズ」新人賞であと一歩のところで受賞を逃してしまいましたが、この会を通じて得られた経験の成果の一つだと思っています。
さて、今回は「第52回・刑事コロンボ〜別れのワイン」を振り返りつつ、物語で重要なアイテムとなる「ヴィンテージ・ポート」を紹介しました。

刑事コロンボ「別れのワイン」(1973年)

 ワイン醸造家であり熱烈なコレクターでもあるエイドリアン・カッシーニは、ワイナリーを売ると言い出した腹違いの弟リックを背後から衝動的に殴り倒してしまいます。エイドリアンはリックを縛り上げワイン貯蔵庫に閉じ込め、空調を切ってから、ニューヨークのワイン競売に旅立ちます。1週間後、ワイナリーに戻ったエイドリアンは、窒息したリックの死体を海に投げ込み、警察はダイビングでの事故と判断しました。しかしコロンボは、死亡前の二日間絶食状態にあったことと、スポーツカーが雨に濡れていないことに疑問を持つのです。


 コロンボは執拗にエイドリアンに食い下がるものの、決め手がありません。彼は非礼のお詫びにエイドリアンと秘書のカレンをディナーに招待します。エイドリアンはコロンボのワイン選びに驚き喜ぶのですが、デザートに出されたヴィンテージ・ポートを口にして激怒します。 それは40℃以上の高温にさらされて劣化していたからです。他の人間には分からない微妙な違いを、ワインの専門家であるエイドリアンは見破ったのです…。
 そして、結末は…?

 第52回では、ドラマに登場した「フェレイラ」のレイトボトルド・ヴィンテージ・ポートを用意したのですが、今回ははあいにく手に入りませんでした。代わりにグラハム社の単一畑のヴィンテージ・ポートを用意しました。

   

「グラハム・マルヴェドス・ヴィンテージ 2004年 」  (タイプ:甘口/ヴィンテージ・ポート 品種:トウリガ・ナショナル、トウリガ・フランカ他 産地:ポルトガル/ドウロ )
 1820年創業のグラハム社では、名門シミントン一族による厳格な品質管理のもとに、手づくりの製法を遵守、現在も名声を博す数々のヴィンテージ・ポートを生産しています。「マルヴェドス・ヴィンテージ」は、1890年に入手した畑「マルヴェドス」から造られる単一畑のヴィンテージ・ポートで、より強く濃厚な甘味と、野性の黒い果実香に丁字、黒コショウなどのスパイスの香りが感じられるのが特徴です。ほのかにオレンジを帯びた濃い色調で、タンニンも豊富で全体的に調和の取れたワインに仕上がっています。

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