「ノニーノ・ジォイエロ・ノニーノ」



★ランチで飲んだイタリアワインのボトル。肝心の「ノニーノ」が写ってない〜。
(左から白の「イエルマン」、スプマンテの「ルスティコ」、赤の「サシカイア」「ジャコモ・バローロ」「カバロット」)


 乃木坂に9月にオープンしたばかりのフレンチのお店「Chemins(シュマン)」にてI先生お持ち帰りのイタリア、ピエモンテのトリュフをメインとしたプレステージ。ちなみに「シュマン」はフランス語で「道」の意味だとか。
 瓶詰めの黒トリュフ(それでもえらく高かったような……)くらいしか食べたことがないので、スライス前の塊のトリュフを見たのは初めてかも。たまにフレンチなどで申し訳程度にちょこっと乗っかっている程度のものなので、あらためて匂いを嗅ぐとそのどこか動物的な、かすかに貝のような磯の香りに驚かされます。イタリアではピエモンテ州とウンブリア州が有名だけど、ピエモンテが白と黒の両方を産するのに対し、ウンブリアはどちらかというと黒中心で、より複雑な料理に使われることか多いそうです。天然物とはいえ、下草の手入れなどは必要で、それなりに手間がかかるとのこと。ちなみに、「トリュフ狩りには豚」と言われるけれど、豚は見つけたらすぐ食べてしまうので今はやはり犬が主流らしいです。10月の上旬から約1ヶ月、アルバにてトリュフ市が開かれるそうで、丁度今が旬なのだとか。
 まずは食前酒に「Nino Franco Prosecco di Valdobbiadene "Rustico"(ニーノ・フランコ・プロセッコ・ディ・ヴァルドッビアーデネ『ルスティコ』)」。淡く透明な、ハチミツの香りのするスプマンテ(スパークリングワイン)。向こうの人はこのタイプのものを2L近いデカンタで魚と一緒に楽しむのだそうで、実際の食前酒はむしろFrizzante(フリザンテ・微発泡) を飲むそうです。
 二本目の白は「Jerman Vintage Tunina 2000(イエルマン・ヴィンテージ・トゥニーナ)」。 フリウリ州で作られるシャルドネ・ソーヴィニヨン等のブレンド。淡く緑がかったイエローの色調で、まだ若いながら豊富なミネラルを感じさせる香り、酸のバランスも良くある意味スタンダードに料理が楽しめるワイン。木樽は使っていないのだそうな。これに合わせた料理はジャガイモのカルテ。ジャガイモをパスタのようにしてから揚げたもの。当然ながら黒トリュフのスライスが乗ります。
 
 トリュフはマツタケと同じで味よりも香りを楽しむ食材。その意味ではその塊を直接口にしてもぼそぼそしていて決して普通 の意味で旨味があるわけではないのだけれど、そのどこか動物的な香りが加わることによって文字通 りなじみのある食材がパワーを発揮して、不思議なコラボレーションが実現するという次第。ジャガイモとの相性は特にいいそうで、ジャガイモを1センチ大に切って塩ゆでし、塩とオリーブオイルをかけ、そこにスライスしたトリュフを加えるだけで抜群の美味しさなのだそうです。うーん、やってみたいけれどそんな塊手に入らないよなあ。
 三本目の赤は「Cavalloto Grignolino Bricco Boschis 1998(カバロット・グリニョリーノ・ブリッコ・ボスキス)」。グリニョリーノが品種名。非常に明るい赤で、昼の光の中で見ると混じり気のないルビーのような輝きがあります。ストロベリーの様なベリー系の香りで、明るい色の割にはピノを思わせるしっかりした味わいでした。
 次に赤の代表格、「Tenuta San Guido Sassicaia 1995(テヌータ・サン・グイド・サシカイヤ)」「Giacomo Conterno Barolo 1995(ジャコモ・コンテルノ・バローロ)」の二本を同時試飲。同じビンテージながら、かたやカベルネ主体のスーパー トスカーナの代表選手、かたやイタリアワインの王バローロの老舗という取り合わせ。同じ産地という点からも、イタリア産トリュフにはパローロかバルバレスコというのが教科書的な答えなのですが、はてさて……。
 サシカイヤは言わずと知れたイタリアながらフランスの品種を使ったどちらかというとボルドータイプのどっしりとした赤。深いガーネットで、香りもどこかスパイシーで動物的。しっかりとした苦渋味の中に甘く舌に残るボディが隠されている、といった風情のワイン。一方ジョコモのバローロは、すこしレンガ味を帯びた色調で、なにより香りが特徴的。香水のような、新鮮な果 物に感じられる酸味と甘味を想起させるフレッシュな香りが前面に来るので驚き。酸味が強く感じられるのもイタリアの赤ならではでしょう。色調と味わいからはどことなくピノ・ノワールを感じさせますが、決定的な違いは動物的なニュアンスがあまり感じられないこと。あくまでも「果 物」から作ったお酒、という印象が強く残ります。どちらがトリュフに合うかというとこれは一概に言えないなあ。産地、及び料理の味わいのバランスから言うとバローロの方に当然軍配が上がるのですが、トリュフの持つどこか動物的な芳香はフランスの品種の赤が持つムスクのようなニュアンスとも調和するように感じられるし。
 さて、これに合わせる料理は鴨のコンフィ。こちらにも贅沢にトリュフのスライスが……。
 
 ちなみに上のグラスの、右の濃い色調の赤がサシカイア、左がバローロです。
 赤ワインが無くなる前にと、トリュフのスライスを挟んだブリーチーズが出されました。これは簡単ながらおいしいかも。
 デザートはチョコレートケーキ、ナシ+キュウイ、そしてミントの葉の飾られたバニラアイス。アイスには白コショウをかけて少し大人の風味を付加。
 このデザートに合わせて出されたのが「Nonino Gioiello Nonino(ノニーノ・ジォイェロ・ノニーノ)」、なんとハチミツで作られたアルコール37%の蒸留酒。「ジォイェロ」とは「宝石」の意味で、この商品は日本未入荷。グラッパのように透明で強い香りだけれど、その香りはグラッパと違ってまるでグレープフルーツのシャーベットのようなどことなく甘い柑橘の香り。なんでもオレンジやレモンの農園で取れるハチミツで作ったそうで、ハチミツの取られる農園の果 実のキャラクターが香りに反映されるのだそうです。
 ノニーノは高級なグラッパを作る名門。1897フリウリ地方にて創業。1973年に四代目当主ベニートは夫人のジャンノアと共に同社初の単一葡萄品種のグラッパを生産。1984年には葡萄果 汁をそのまま蒸留する「ウエ」という新しいジャンルのグレープ・スピリッツを立ち上げています。ノニーノのパンフレットをI先生から見せてもらったのですが、当主の夫人とその娘の三人姉妹が並んだ写 真が大きく印刷されていて、まるで女優さんかモデルさんがポーズをとっているみたいなあでやかさ。「おいおいいくらなんでもそんな格好で葡萄を搾ったりしてないだろう」と思わず言いたくなりますが、実際にお会いしたI先生によると本当にみな美人だったそうな。ただし御年60を過ぎている御夫人の顔にはやや修正が入っているとか……。
 最後の最後はなんと南アフリカ産のグラッパ入りチョコレートボンボン「MIEERLUST」。うーんこれこそいわゆるグラッパ。なんで南アフリカでグラッパなんだろうかと思ったら、イタリア人が作っているのだそうな。
 



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