「ルイ・ジャド・クロ・ヴージョ」1997年


      


 11月の第三木曜日は、言わずと知れた「ボジョレー・ヌーボー」の解禁日ですが、ワインの本場ブルゴーニュのボーヌでは、11月の第三日曜日に『栄光の三日間』をもじったお祭りが催されるとのこと。すなわち「クロ・ド・ヴージョの利き酒騎士団(シュヴァリエ・デュ・タートヴァン)の晩餐会」「オスピス・ド・ボーヌの競売」「ムルソーの昼食会」が続けて行われるそうで、自宅でワインの会を開く際、これにあやかってブルゴーニュワインを揃えようと思い立ったのでした。
 このお祭りのメインはもちろん「オスピス・ド・ボーヌの競売」なのですが、「オスピス・ド・ボーヌ」はブルゴーニュ王国の財務長官ニコラ・ロランが寄進した由緒ある慈善病院で、その歴史的背景からもかなり割高な銘柄となっています。しかもマット・クレイマー「ブルゴーニュワインがわかる」によれば、11月の第三日曜日までに入札者が樽から試飲できるようにしておかなければならないので、早めに発酵を完了させねばならず、その結果 その品質はあまり当てにならないものになっているとのこと。「やまや」で見つけた一本は三万円近い値段が……。結局「オスピス・ド・ボーヌ」は断念して、「クロ・ド・ヴージョ」「ムルソー」を購入したのでした。
 結果として私が用意したのは以下の通り。
<メニュー>
・Hors d'Oeuvre Carpaccio di Pesce.  白身魚のカルパッチョ
・ Poisson Mille-feuille de fruits de mer.  魚介のミルフィーユ
・ Roti Steak de Canard aux baies de Myrtille.  鴨のブルーベリーソース
<ワイン>
・ Vin Champagne Don Perignon 1995 シャンパーニュ・ドン・ペリニヨン95年
・ Bouchard Pere et Fils Meursault Charmes 1999  ブシャール・ペール・エ・フィス・ムルソー・シャルム99年
・ Louis Jadot Clos Vougeot 1997  ルイ・ジャド・クロ・ヴージョ97年
・Ch. Coutet 1989 シヤトー・クーテ89年
<チーズ>
・ Fromage Chaurce シャウルス(シャンパーニュ産)
・ Petit Epoisse プティ・エポワス(ブルゴーニュ産)
・ Mimolette ミモレット(フランドル産)
・ Roquefort ロックフォール(ルエルグ産)

 下準備をする時間がなかったので、その場でできる慣れた料理にしたつもりが、真鯛の刺身は凍らせてしまうし、いつも使っているフランス鴨も手に入らず本鴨を使ったら火加減が分からず……と結構うまくいかなかったりして……。チーズも「エポワス」が手に入らず、同じブルゴーニュ産の、「プティ・エポワス」と呼ばれるマールで洗うウオッシュチーズ(別 な銘柄名があったんだけれどメモし忘れた……)を購入したのでした。
 「ムルソー・シャルム」はバター香、ナッツ香のある柔らかい風味のシャルドネ。酸も穏やかで、まさに「シャルム」の名の通 り「柔らかい」白でした。
 「クロ・ド・ヴージョ」は、以前確かフェブレイの物を飲んだことがあり、色の明るいボディの少ないワインだなという印象がありました。実際、ヴォーヌ・ロマネの隣にあるヴージョ村はその75%が特級畑の「クロ・ド・ヴージョ」で、この1336年にシトー派修道院によって作られた名高い畑は殆ど分割されたことがなかったのですが、元々がシトー派修道士達のブレンド技術によって支えられていたワインのため、区画所有者がべらぼうに多くなってしまった現在では期待外れの銘柄も多いと言われています。
 なるべく外れを選びたくない一心で本で調べつつ手にしたのがこの「ルイ・ジャド」のもの。濃縮感を持たせつつ、フィネスを大事にしたピノ・ノワールの作り手という印象があって、私にとっては安心感のある生産者です。実際開けてみると、やはりピノの割には濃い赤紫色で、ベリーやチェリーの香りも健在、ムスク香・なめし皮の香りも穏やかで甘酸や苦渋味のバランスも良……ということでほぼ期待通 り。97年というビンテージを考慮して抜栓後しばらく置いておき、ムルソーを開けてしまった人にはロワールのソーヴィニヨン・ブランでしばらく我慢してもらったのでした。
 食後にはリクエストに答えて、ブルゴーニュとは違うけれど貴腐ワインを出しました。89年物のクーテは、塩味のあるロックフォールとも、ショコラケーキともベストのマッチング。ということで予定通 りにいかないところもあったけれど、ホームパーティ版「クロ・ド・ヴージョの晩餐会」は、取りあえずはまあまあ成功したということにしておきましょうか。



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