「ガヤ」〜「ガイア&レイ」96年と「スペルス」93年



 海外の人間とも仕事をする機会の多い知人から、非常に美味しいイタリアワインを飲んだという電話がありました。
「あの"サシカイア"が霞んで見えるね! ガヤのバルバレスコって知ってる?」
「うちに何本かあるよ……」
 ガヤのバルバレスコといえば、私がやまやのブラインドテストで偶然にも優勝した時に貰った景品でもあるので、これはおいそれと開ける訳にはいかないのですが……。
 結局年末の自宅忘年会でガヤの白と赤を開けることにしました。どちらもバルバレスコ以上に手に入らない品ではありますが……要するに自分でも飲みたかったのね。
 「世界一優雅なワイン選び」(集英社文庫)には、ガヤをナンバーワンブランドに押し上げたアンジェロ・ガヤが紹介されています。「今やバルバレスコがバローロから主役の座を奪ったとするなら、それはひとえに彼のおかげである。丹念に作られたワインは、強烈で生き生きとし、くっきりとしたガイアの性格そのままの、現代派のスタイルを持っている」
 ワインの発酵はステンレスタンクに全て切り替え、発酵温度を調整し果汁が果皮と過ごす期間を管理してタンニン量をコントロールする。その一方で、熟成は木樽を用いることにより、色を安定させタンニンを和らげる。発酵済みの新酒はフレンチオークの小樽に半年入れた後、瓶詰めするまでの一、二年間6000Lの木製槽に移す。いわく、「洗練の具合は完全無欠」
 テイスティングした限りでは、とにかく驚くほど雑味がないのが特徴的です。ブドウそのもので勝負しているという感じ。余計な樽香もないし、ある程度寝かせた物でもイタリアワインにありがちな液色の劣化は見られないし。以前にガヤ・バルバレスコをイタリアワイン「ソライア」と比較試飲した時も、「ソライア」がかなり濃厚で複雑な重さを持っているのに対し、ガヤはあくまでストレートでした。ある程度雑味があった方がイタリアワインらしいという気もしますけど。
 さて、この日開けた白は「ガイア&レイ」。1979年に植えられたシャルドネ種から作られるもの。シャルドネといえばモンラッシュをはじめとするブルゴーニュの白ワインですが、これも飲んでみると色調が薄いにもかかわらず強力な香りとしっかりとした味。文句なしに「旨い!」と言えるもの。濃厚な舌触りはバタール・モンラッシュを彷彿とさせます。ちなみにGAIAは長女の名、REYは祖母の名だそうです。
 一方の赤は「バローロ・スペルス」。ガヤといえばバルバレスコなのに、これはガヤのバローロ。バルバレスコもバローロも村の名前だろうに、と思っていたのですが、そもそもバルバレスコ村とバルバレスコという呼称資格(アペラシオン)は別なのですね。だからこのスペルスのラベルにも、下に「BAROLO」という表記と、「BOTTLED BY GAYA, GARGARESCO, ITALIA」という表記とが並立しています。すなわちバルバレスコ村のガヤ社のバローロ、というわけ。こちらも全く雑味を感じさせないストレートな味。色調は明るいのに香りは強い。
 どちらも徹底的に雑味を排除しブドウ本来の味を引き出そうとしているという点で、フランスらしさのあるイタリアワイン、といえるのではないでしょうか。そういう言い方をすると怒られるかも知れませんが、ガヤ氏自身、フランスとカリフォルニアで学び、フランス語と英語を自在に駆使する方らしいので。



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