「シャトー・グラン・ピュイ・ラコスト」88年



 久しぶりに新宿の京王プラザ「グリル・メダリオン」へ。ここはワインリストが充実しているし、銀座の店に比べて天井も高くゆったりとしているので好きだったのですが、なんか改装されちゃって大分以前よりもカジュアルな雰囲気になってしまいました。うーん、前の重厚な雰囲気の方が良かったんだけどな。ランチメニューも2000-2500円のリーズナブルな物に限られていて、ちょっと残念。
 ただワインリストに関しては、展望レストランの「アンブローシャ」と共通で相変わらず充実していました。そこでまだ飲んだことのなかったポイヤック5級の「グラン・ピュイ・ラコスト」をオーダー。ボルドーの級別AOCを暗記する時長ったらしくて忘れることの多い名前だったので、あえて注文したのでした。名前の長さなら、ポイヤックには「シャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランド」というさらに上を行く名品がありますが、こちらの方はむしろ繰り返し覚えてしまっていたりして。
 どこか旨味がある、としか表現しようのない独特の芳香はボルドー特有のもの。88年は当たり年だけあって、前回飲んだ86年のポムロールに比べて格段に力強いです。
 ラベル中央の「サン・ギロン」の名は、フランス革命前にこのブドウ園を所有していた人物の名前なのだそうです。このサン・ギロンから、フランソワ・ラコストに遺贈されて「グラン・ピュイ・ラコスト」という名称になったのですが、それにしても、18世紀の人物の名がそのまま残されているわけですね。ここら辺がフランスワインの強みです。「16世紀のはじめからブドウ園が云々……」なんて新大陸のワインメーカーにはなかなか言えないうたい文句。
 ではさっそく比較してみようと、一緒にオーダーしたのがカリフォルニアの「スタッグス・リープ94年」。ビンテージの違いはあれど、どちらが好みか……。弟は「ラコスト」の置いておくと香りがなじんでくる繊細なところを認めつつも、「スタッグス・リープ」の濃厚さに軍配を挙げたのでした。確かに「濃縮感」ではどうしても同じ価格帯だとカリフォルニアに得点を入れてしまうなあ。一方で「香りの複雑さ」という点ではボルドーの方がやや幅の広さを感じますが、ここまでくるともう好きずきですね。「ボルドーのグラン・クリュを制覇してやれ!」なんて思ってみたりして。



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