「レ・シプレ・ド・クリマン」96年



 「レ・シプレ・ド・クリマン」はバルザックの貴腐ワイン「シャトー・クリマン」のセカンドワイン。飲み会で持ち込んでくれた人がいて、初めて存在を知ったのですが。通常セカンドワインは本家のワインと同じ畑のまだ若い木を使用します。もしくは本家のワインと同じように醸造した上で、品質が今一つと判断された場合もセカンドに落ちるわけですが、ある意味ではもともとのワインと殆ど同じ条件で同じメーカーが作るわけですから、値段は安くて味は一流、というケースが多いようです。もっともなかなか本家と並行して試飲することもないので、どのくらい「迫って」いるのかはちょっと分からないんですが。

バタール・モンラッシェ「だいたいセカンドなんてなあ、本来はなかったものを、余ったワインを詰めて儲けようとしているだけなんじゃないのか?」
レ・フォール・ド・ラトゥール「なに威張ってやがる、私生児(バタール)のくせして! 俺はれっきとしたラトゥール畑の若い樹から作られてるんだからな、本家と変わりないのよ!」
バタール・モンラッシェ「ふん、こっちはセカンドワインじゃないぞ、別な畑なんだからな。一緒にするんじゃねえよ。そもそも最近本家の体の具合が悪いから、今やモンラッシェよりはバタールの方が濃厚で旨いって、もっぱらの評判だぜ!」
パヴィヨン・ルージュ・ドゥ・シャトー・マルゴー「みんな、ケンカはよしなさいよ、みっともないわ……」
レ・フォール・ド・ラトゥール「うるせえ、出しゃばりめ。マルゴーのセカンドなんて薄くて飲めたもんじゃねえぜ!
パヴィヨン・ルージュ・ドゥ・シャトー・マルゴー「ぬわんですって! あんた方濃いだけが取り柄の輩には、マルゴーの繊細さなんて所詮分かりっこないわよ!」
レ・シプレ・ド・クリマン「あ、どうも新米の貴腐ワインです。初めまして。シャトー・クリマンのセカンドでレ・シプレ・ド・クリマンと申します」
パヴィヨン・ルージュ・ドゥ・シャトー・マルゴー「あら、可愛い子」
レ・フォール・ド・ラトゥール「おれいつもわかんなくなるんだけどさ、クリマンってソーテルヌなのか、バルザックなのか?」
バタール・モンラッシェ「つまんねえこと聞いてるんじゃないよ! こいつは意外とこう見えてしっかりしてんだぜ。貴腐ワイン独特の樹液香もあるしよ。俺が独特の樽香のようなしっかりした滋味感を保っているのと似てるんだよな」
パヴィヨン・ルージュ・ドゥ・シャトー・マルゴー「あなた、お値段はおいくら?」
レ・シプレ・ド・クリマン「そうですね、大体店頭価格で◯◇△□円くらい……」
一同「や、安い!
レ・フォール・ド・ラトゥール「俺達だって1万円を下ることは滅多にないのに!」
パヴィヨン・ルージュ・ドゥ・シャトー・マルゴー「あんまり手軽に出回っちゃうとこっちの立場がないわねえ……」

 シャトー・クリマンの濃厚さとはちょっと違いますが、貴腐ワイン独特の樹脂香というか複雑なハチミツ香がしっかりしていて、とてもお買い得なワインでした。



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