「ダウズ・ヴィンテージ・ポート」77年



 新婚のEさん宅でワインパーティーでもやりましょうと約束してからはや半年、なかなか都合がつかない中、やっと実現の運びとなったのですが、Eさんからのオーダーは「全部赤ワイン。一本5千円くらいで。しかも結構濃いもので。酸味のさわやかな奴と苦味のきいた奴と果実香のある奴と馬の鞍の香りのする奴」。
 最後のオーダーは奥さんが乗馬をやってらっしゃるからなのですが、馬の鞍の匂いなんて嗅いだこともない。手がかりとなるのはローヌ地方のシラーを使ったタイプ。セミナーのテイスティングでも出てきた、「馬小屋臭」の典型と言われるまるで漬け物のような酸っぱい匂いのものが、ローヌの北のサン・ジョセフで作られています。雑誌にも「オーストラリアのシラーズ」あたりがそれと書かれていたとのことなので、まあそこら辺を参考に私が用意したラインナップは……。
●馬の鞍の香りのするのは……「ダルウィーニー・ムーナンベル・シラーズ97年」(オーストラリア)
●爽やかな酸味のするのは……「コンティ・コンスタンティ・ブルネーロ・ディ・モンタルチーノ94年」(イタリア)
●ブドウの果実香があるのは……「ドムス・アウレア・カベルネ・ソーヴィニヨン96年」(チリ)
●苦味のきいた味のするのは……「ローレル・グレン・カベルネ・ソーヴィニヨン96年」(アメリカ)
 果たしてオーダー通りだったかどうか。このホームページでも紹介した「ドムス・アウレア」の独特の香りには皆さんやはり驚いた様子。カリフォルニアの「ローレル・グレン」よりも濃いかも知れない。一番の不人気は「ブルネーロ・ディ・モンタルチーノ」でした。イタリアの名門D.O.C.G.も南半球の濃厚なタイプには少々負けるのかも。一本一万円ならともかく、一本5千円までなら、フランスの物よりも南半球のオーストラリア、カリフォルニア、チリの方がはずれはないでしょうね。
 さて、デザートワインには当初ソーテルヌの貴腐ワインを考えていたのですが、「トカイのおいしいやつを飲んだことがあるから他のタイプがいい」というリクエストにお応えしてヴィンテージポートを用意しました。渋谷で65年物のちょっと珍しいものを見つけたのでそれにしようかなとも思ったのですが、買ってから自分のバースディ・ヴィンテージなのでもったいないと思い(おいおい……)、この77年物を別に買ってしまったのでした。
 ヴィンテージポートは原則として出来の良い年にしかリリースされないので、70年代のヴィンテージは物の本によれば70年と77年の二回だけ。厳密には各メーカーで若干ずれることもあるようですけど、それだけに狙った年のものが手に入る確率は少ないです。先の65年なんかはメインのヴィンテージではないので次に手に入る機会はなきに等しい(そうでなくても65年は優良年ではないので殆ど見かけないです……)。
 20年以上もの間瓶詰めされていたので、シールキャップを開けると白い粉がぼろぼろと剥がれ落ち、コルクもぼろぼろで抜く最中に半分に切れてしまう始末。「大丈夫かなこれ」と思いつつも持参したデカンターに何とか移しテイスティング……「旨い!」良かったァ……。
 色はかなり褐色化が進み、殆どブランデーと変わらない状態。しかしほのかに甘みが残り、独特のカカオや葉巻のようなスモーキーな香りも隠れているという感じ。
 Eさん宅ではこの日の為に、自宅で焼いたパンや赤ピーマンソースで仕上げた伊勢エビ、大きなラムステーキバルサミコソース仕立てなどを用意してくれていました。何とかこれで、半年前からの宿題を終えたという感じ。次は少し暑いうちに、白ワインづくしもやりましょう。



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