「発泡性純米原酒」



 自宅で新年会。新年を祝うとしたら日本酒であろう。ということで、いつもはワインを並べるところを、今回は日本酒で揃えることに。
 前日近所の酒屋で私が買って置いたのは、愛知の純米吟醸「醸し人・九平次」というお酒。本当は山形の「十四代」が欲しかったのだが色々人にも頼んだにもかかわらず手に入らなかったのだ。 

 さて、新年なんだから入念に準備せねばと、実家から持ってきた「京都・竹之御所風精進料理」という本からメニューをセレクトする。最初から目を付けていたのは「たけのこ姿ずし」。本当の意味では正月というよりは春の料理でしょうが……。刺身の代わりに醤油と酒で煮込んで味を付けた竹の子を寿司ご飯に載せるというもの。なんとなく簡単そうだし、「貞明皇后様が、曇華院のあのおすしはまだか、と献上されるのを心待ちにされたというほどの味」というあおり文句がそそられます。誰なんだ貞明皇后って……。鍋に昆布を敷き水を張って竹の子を入れ、塩・清酒・砂糖・醤油少々を加えて煮ます。本には三時間煮ろと書いてあるのですが、朝起きて昼過ぎまでに仕上げなければならない関係上一時間半で済ませました。でも充分濃かったけどなあ。一方で固めにご飯を炊いて酢と砂糖と塩を加えて酢飯を二合ほど用意し、とろろ昆布を刻んで混ぜ込んでおにぎりにしておき、これに煮込んで味のついた竹の子をのせます。本来ならこのまま竹の皮で包んで一晩重しをしておくそうなんだけど、ラップで包んでそのまましばらく置いて済ませました。

 次に「春菊ののり巻き」に取り掛かります。春菊を塩茹でして、軽く搾って海苔の上に並べ、食用菊を散らしてそのままのり巻きにするというもの。一束用意したのに出来たのり巻きは一本だけ。しかも後から水がしみ出てきてイマイチだったかな。その隣には焼き豆腐を添え、その上に木の芽味噌を乗せました。木の芽味噌は山椒を刻んですり鉢ですった後に白味噌と清酒を加えて伸ばしたもの。本来ならこれにさくら麩を乗せて「はないかだ」と呼ぶんだけれど、肝心のさくら麩が買えなかったのでした。
 

 メインのフグは刺身と鍋用のぶつ切りを用意(めちゃんこ高い……)。それだけじゃ淋しいかなと真鯛とホタテの刺身を用意して薄く切り分ける。真鯛の刺身は黒い平皿の上にフグ刺しと一緒に円形に並べてみましたが、何分素人なもので皿が透けて見えるほどにはなりませんでした。ホタテの刺身はちょっと洋風の味を狙ってキウイソース仕立てに。キウイとレモンをジューサーにかけて塩胡椒とオリーブオイルを混ぜて刺身の下に敷き、上にはイクラを添え、周りにはキウイの切り身と生ハムを並べてみました。結構見た目はきれいに出来たんだけど本物のレモンをジューサーにそのままかけたのでソースは苦かった。ここはレモン汁を別途用意して混ぜるべきだったなあ。
 Tさんの持ってきた新潟の発泡性純米原酒と、手作りの魚の南蛮漬け、そしてAさんの持ってきた秋田の濁り酒とお漬け物を並べて、買ったばかりのデジカメで撮影したのが左の写真。

 宴会の始まりはTさん持参の「発泡性純米原酒」。新潟県お福酒造。鮮やかなブルーのボトルにブルーのラベル。大きく「Sparkling Junmai Genshu」なんて書いてあって、一見ワインのよう。キワモノと思いきや、これが意外とおいしかった! 香りは純米酒、でも飲んでみると甘めのシャンパーニュのよう。程良く酸味があってとても柔らかい。新潟には「あかいお酒」というこれまたワインのような色鮮やかな日本酒がありましたが、これもなかなかの仕上がりで、さすが米どころ、一工夫合ってしかも味は落とさない。このチャレンジ精神は見習いたいものですなあ。
 
 Aさん持参の「ささにごり・しぼりたて生酒」も良かったです。秋田県天寿酒造。「雪国秋田の白くたおやかな光景に思いを馳せながら、喉越しに走る活きた香味をお楽しみ下さい」とあります。濁り酒は当たりはずれはあるものの、美味しいものは本当に美味しいので好きなのです。なんで「ささにごり」なんだろう。笹の葉が混じっているとも思えないけど。
 
 途中参加のKさん持参の「北の庄・純米大吟醸」は、杜氏の名前入りの由緒ある銘柄。やや辛口のストレートな「これぞ純米大吟醸」という印象のお酒。福井県舟木酒造。「軽快でなめらかなタイプ」とありますが確かにその通りですね。「厳寒に寝食を忘れ、最高の酒を作りたい、という心意気から醸された、自然に心踊る純米大吟醸です」とあります。いかにも正統派の清酒と言えましょう。
 ひと段落して鍋に入る前にIさん持参の中国茶でひと休み。緑茶の中に菊の花が仕込んであって、お湯の入った容器に入れるとその花が顔を出してぱっと開くというものなんですけど……。
 
 ←いまいち撮影技術の方に問題が……Photoshopで色調補正したら余計にくすんでしまった感じ……ホントはもう少し美しいんですけどね。
 さて、さっそくてっちり鍋に取りかかるものの、「もう食えん」との声も。何しろ結構食べそうな方が一人土壇場で欠席になったもので……。そこでたまたま電話をかけてきたSさんを無理矢理呼び出して鍋に参加させることに。ついでにSさんの作ったことがあるという「トロの炙り」をやってもらう。トロはさっと表面を炙ると甘味が増して旨い! というわけで本来なら炭火が欲しいところなのだが、そんな気の利いたものはないのでグリルでやっていだく。中が良く見えないので火加減が難しいところ。「もっと強い火でバッとやると美味しいんですけどね」とはSさんの弁。でも充分旨かったっす。
 さて、日本酒はある意味ワインよりも後で答える傾向があるようで……宴会の後半ともなると結構酔いが回って記憶も定かでなかったりなんかします。電車を乗り過ごしちゃった方もいたみたい。私は自分の家なんでその点は平気なんだけど(コラコラ……)。

 用意してはいたけれど出せなかった食材もあります。一つはタラバガニ。これも焼いて食べるつもりでした。結局翌週まで冷凍にしておいて一人で食べちゃったけど。もう一つは納豆の餅ぐるみ。丸餅を焼いて叩いて伸ばし、餃子を作る要領で味を付けた黒納豆を包み込むというもの。数日後に挑戦してみたのですが、焼いた後うまく伸ばすことができなくて、結局面倒臭くなって上に納豆をのっけただけで食べちゃった。当日やっていたら失敗して恥かいたかもです。
 精進料理は基本的に肉や卵を使わないので非常にヘルシー。あっさりした味付けも好評でした。でも私としてはまだまだ肉の塊とかチーズのてんこもりとかにそそられるお年頃なので(やばいかもよこの歳だと……)次回は再び洋風の肉料理にしようと思っているのでした。この半年、毎月自宅で盛り沢山の宴会やっているお陰で月に一キロ位ずつ身の回りの重力が増えているような気がするなあ。



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