「オーパス・ワン」98年



 WINESCHOLA主催のプレステージワイン&ランチ、今回のテーマはカリフォルニア二大ワインの比較試飲。すなわち「ロバート・モンダヴィ・リザーヴ」「オーパス・ワン」の91年物と98年物。うーむむ、これは飲まねばなるまい! といそいそと参加。
 「オーパス・ワン(OPUS ONE)」は「作品番号第一番」の意。主に音楽用語で、例えばベートーベンの交響曲第一番は作品番号21なので、よく「OP.21」と併記されています。(モーツァルトの場合だけはK=ケッヘルという言葉を使うけど……)
これはカリフォルニアのロバート・モンダヴイと、フランスのボルドー、シヤトー・ムートンのバロン・フィリップとのコラボレーションによる逸品。英語圏と仏語・ラテン語圏の両方で通 用する音楽用語を使うと共に、 輝かしい第一歩を祝しての「第一番」を意味しています。ラベルも、白地に金とブルーというシンプルな色使いでありながら、二人のシルエットとサインが入っていて、コラボレーションによる作品であることが分かるようなデザインになっています。
 先に書いたように、76年に「ムートン」がカリフォルニアワインに破れた訳ですが、その後すぐにカリフォルニアと手を結ぼうと考えたところは、なかなかに思考が柔軟な気がします。確かにこれ以上土地を拡張できないフランスワインメーカーにとって、恵まれた環境と確実な技術力のあるカリフォルニアは資本投資先としても申し分ないです。まあ、ここまで素早く動けたのは、ユダヤ系のロスチャイルドならでは、という気もしますけれど。
 この日の試飲銘柄と、その時メモしたコメントは以下の通り。

1.Robert Mondavi To-Kalon Vinyard Fume Blanc Reserve 1998

 もともとカリフォルニアにはソーヴィニヨン・ブランが定着していましたが、カジュアルな甘口ワインとして印象づけられていて、上級な辛口ワインとしては受け入れられていないという状況がありました。そこでモンダヴィはあえて「フュメ・ブラン」と名前を変えることによって高級感を出した、というわけです。このワインはトカロン・ヴィンヤードのもの。「トカロン」とは「有終の美」を意味するそうですが、いずれにしても日本では販売されていないとのこと。ラベルはブドウの葉から作られており、インクも植物性といった徹底したエコロジー主義。とはいうものの、高級感を出すためにあえて再利用の難しいすりガラスボトルを使用しています。
 色は淡めのレモン色。かすかに青っぽいナッツ香あり。辛口だけどコクがあり少し甘めに感じます。酸味も穏やかで、どちらかというとカリフォルニアのシャルドネを思わせました。

2.Overture

 さて、二番目に出されたワインはあえてブラインドで出されました。
 明るい赤紫色で、ややグラスの底が見える程の色の濃さ。透明度もあり、クリアな印象。香りははっきりしていて果 実香あり。若干ではあるがインクのようなニュアンスあり。苦渋味あり。少し軽めの印象だけど、アタック感は強く残る……。
 何だと思いますかと聞かれて、「おそらくはフランスのボルドータイプ。ムートンでなければプティ・ムートンだと思います」と答えたのでした。こってりの果 実感とは違う、どこか清澄感のある印象からそう答えたのですが、他のメンバーは殆どが新世界の物と答えていました。
 正解は「Overture(序曲)」という、はじめて聞く銘柄。すなわち「オーパス・ワン」のセカンドワインなのでした。オーパスにセカンドがあったなんて! なるほど言われてみればセカンドワインの持つ飲みやすさ、柔らかさを持っています。これはワイナリーだけで販売されていて、価格は50ドルと手頃なものの、日本でも米国でも手に入らないレア物でありました。

3.Robert Mondavi Cabernet Sauvignon Reserve 1998(Cabernet Sauvignon 84%, Cabernet Franc 11%, Merlot 4%, Petit Verdot 1%)

 色は明るい赤紫色、熟成感は控えめですが、紫色は強くない。香りはややこもったヘビーな印象、果 実感、そしてどこかお菓子のようなバター香も感じました。渋味はあり、「序曲」よりも味が濃く、よりドライな感じです。

4.Opus One 1998(Cabernet Sauvignon 91%, Cabernet Franc 7%, Merlot 1%, Petit Verdot 1%)

 色合いはモンダヴィ・リザーヴに近いけれど、若干暗い深味のある色。香りはより正統派のボルドーをイメージさせます。味はまろやかですが、まだ全体的には閉じているような印象でした。

5.Robert Mondavi Cabernet Sauvignon Reserve 1991

 赤紫色にややレンガ色が加わり、少し透明度も落ちています。香りには熟成感も加わり、少し動物的な香りも出てきていました。苦渋味は意外にしっかりしていて、甘味も感じられます。

6.Opus One 1991(Cabernet Sauvignon 93%, Cabernet Franc 6%, Merlot 1%)

 91年はオーパスにとっては自社専用ワイナリー完成の年でもあり、ある意味記念すべきビンテージであります。それまではモンダヴィの設備でワインを仕込んでいたものを、この年ははじめて自社設備で仕込んだわけです。
 色は赤紫で、やはり透明度は落ちています。熟成感もありムスク香も豊か。味はまろやかでなじんでいます。

 なんかいろいろ偉そうなことを書いてはみましたが、違いはと言われると正直難しいですね。後で同じものを出されても区別 できないんじゃないかしら……。
 ちなみにこの日のお料理は、柑橘に魚介をマリネしたセビーチェ、ソフトシェルクラブを包んだ生湯葉、ラムのガーリックマリネ等。



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