「3月の独り言」


3月28日。

さあマンガを描こうと、気合いを入れたはいいけれど、さてその前に気分を盛り上げるためにとDVDのスイッチを入れる。(既にこの段階でまちがっているのだろうが……)

DVDの困ったところは、まだまだ圧倒的にソフトが少ないことですね。何せ「スター・ウォーズ」も「インディペンデンス・デイ」も、まして「タイタニック」すら出ていない。どう考えても画質の良いDVD向きの映像主体の物が足りないんだよなあ。その割に古いモノクロ映画なんかは充実していて、1927年版の「ベン・ハー」なんてのまである。べつにモノクロで最初から画質が悪いんだから、これこそビデオと変わりないと思うんだけど……。

ただうちのテレビは横長ワイド画面タイプではないので、実はモノクロ映画とかアニメとかの方がぴったり画面に入って見やすいのであった。最近の映画のソフトは殆どワイド画面タイプで、テレビ画面では上下に隙間が出来てしまう。

で、そのモノクロ・サイレントの「ベン・ハー」(140分)とか「アマデウス」(152分)とかのDVDを観てたら、あっと言う間に日が暮れているという……。テレビ画面の観すぎて少々頭が痛いので寝ることにする。

うーん、せっかくの日曜日、これでいいのかな……。


3月19日。

被害者も容疑者も死亡……自殺に見えるが実は、なんて本格推理の作家ならもうひとひねりオチが必要かも……などと、安室奈美恵の母親殺害事件で何かと寒々しい雰囲気の中、エルロイの「キラー・オン・ザ・ロード」を一気に読む。

連続殺人者の一人称の小説で、徹底して殺す側の視点で書かれているのが魅力でもあり、また空恐ろしい点でもある。凶悪殺人者が刑務所での満ち足りた生活を満喫する中、捜査員は自殺してしまう、なんてシーンもある。テレビでは「オウム、サリン事件から丁度四年目の3/20にセミナー開く」のニュース。単なる予感なんだけど、また死人の出る事件が起きて、しかも警察もそれを止められないんじゃないかなあと思う。教祖は死刑になっても殉死ということで逆に教団は盛り上がりかねないけど、無期懲役じゃ出所してしまうのでどちらにころんでも思う壷か……。日本では無期懲役者の平均出獄年数は十七年。死刑と無期懲役の差は大きすぎるのであります。

多分死刑になっても殺人者による残虐な殺され方をされるわけではないのだから、生きる希望もないのなら殺しでもした方が良いと思う人間も多いだろうなあなどと暗いことを考えながら、「だんご三兄弟」のCDをかける。「だんご、だんご♪(この程度なら著作権に引っかからないよね)……」買っちゃったんですよ、今頃。普通買わないよな。ついでにこの歌の生みの親佐藤雅彦氏の本「クリック」も読む。思わずはっはっはっと笑ってしまう。

……ああ、なんて適当な人間なんでしょう。


スタンリー・キューブリック死去。

トム・クルーズ主演の狂気の愛を描いた作品を撮影中と聞いていたので、この報道には思わずビックリである。「フルメタル・ジャケット」から十年以上経っているので、あまり現役の監督という意識はなくなってはいたが、もし「一番好きな映画監督は?」と聞かれたら、今でも「キューブリック!」と答えられるほど、私の中では重要な人物だった。自分の同人誌の中でも、「MY BEST MOVIE」で第一位に「時計仕掛けのオレンジ」を上げている。

どこかの新聞でスピルバーグのコメントが載っていた。「我々は彼の真似をしようとしたが、彼は誰の真似もしようとしなかった」実際、その通りである。同じ様なテーマ、ストーリーを描いても、キューブリックの作品だけはフィルムから押し寄せてくるエネルギーが全然違うのである。クラシックを基調とした重厚な音楽も、軽い作品では得てして映像の方が負けてしまいがちだが、彼の作品だけは美しさにおいても残酷さにおいても、映像と音楽のハーモニーが崩れることはなかった。「時計仕掛けのオレンジ」で、ベートーベンの第九交響曲を残虐な暴力シーンに使って成功させることができたのもキューブリックならではであろう。この場合、原作でもこの曲が重要な役割を果たすのでなおさらである。

黒沢明と淀川長治を抜きで98年は語れないが、キューブリック抜きで99年は語れない。


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