「ルベスコ」88年



 何という名前の雑誌か忘れたのですが、今話題の若者の特集ということで、SMAPの木村拓也、芥川賞の平野系一郎、タレントの広末涼子等と共に、サッカー選手の中田英寿選手が選ばれていて、インタビューに答えていました。彼らに共通しているのが、どういった状況でも自分を貫き通すこと、努力や勉強という言葉は嫌いだということなどでした。中田選手にしても、場所が海外だろうが地方だろうがひたすら「勝つ」ことを目指すだけだ、という非常にシンプルなスタンスを持っていて、しがらみや警戒心で躊躇してしまう人間を尻目に颯爽と進んでいるところが、多くの人間を惹きつけているのでしょう。
 サッカーにはあまり関心のない私でさえも、「オー・プラス」の開発に携わってはじめて知ってからは何となく中田選手のことが色々と耳に入ってくるようになりました。従って、新宿の「スパティオ」というイタリア料理のお店でたまたま注文したグラスワインが中田選手の凱旋先であるペルージャのものだと知って、思わず銘柄を聞いてしまった次第であります。実際、メニューに銘柄の載らないグラスワインにしてはかなり濃厚で良い香りのするものだったので。
 その時聞いた銘柄「ルベスコ」を手帳にメモしておいたおかげで、本八幡の酒屋でたまたま同じ銘柄を見つけた時には思わず喜んでしまいました。ラベルの裏には、実際産地としてペルージャの地名が明記されています。

 ビンテージは88年。サンジョベーゼ主体とはいえ、その濃厚な色と複雑ながら軽やかな香りは他のキャンティタイプとは若干違ったニュアンス。一見、ボルドーかと思わせるほどの濃い色調は、バローロよりもボルドーを思わせるけれど、若干ながらレンガがかった色合いはいかにもイタリア物らしさを感じます。実際、フランスワインの殆どがボルドーとブルゴーニュという二つの究極のスタイルを目指しているのに対し、イタリアワインは他に紹介したサシカイアといいアマローネといい、はたまたこのルベスコといい、実に個性的、それぞれが葡萄の特徴を押さえつつもある種の「自分らしさ」を主張しているような気がします。



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