「アルツァイヤー・カペレンベルク・オルテガ」95年



 Yさんの持ってきたのはラインヘッセンのトロッケンベーレンアウスレーゼ(TBA)のハーフボトル。ドイツワインの場合、収穫された葡萄の搾汁液の糖度から「キャビネット」「シュペートレーゼ」「アウスレーゼ」「ベーレンアウスレーゼ」「アイスヴァイン」「トロッケンベーレンアウスレーゼ」と位が上がっていきます。従ってTBAは格付け上は最高に位置します。後は造り手次第でいくらでも高価格に。手元の雑誌には、「キートリッヒャー・グレーフェンベルク・リースリング・トロッケンベーレンアウスレーゼ」90年が8万7400円とありますから、あの「シャトー・ディケム」を超える価格帯なのでした。
 さて、この三角形をした黄金色のラベル、中央に「オルテガ」とあります。オルテガといえばあの「大衆の反逆」の著者……とまず人名が浮かんだので、そういう名の造り手だろうかと思ったのですが、調べてみるとこれは葡萄の品種の名前。ドイツで栽培されている白ワイン用の品種に「オルテガ」というものがあるのですね。ソムリエ教本によれば、最も多く栽培されているリースリングの栽培面積が約2万ヘクタール、ドイツ全体の22%を占めているのに対し、オルテガは約1000ヘクタール1%しかないという珍しい品種。あまり日本に入って来てはいないんじゃないでしょうか。私も聞いたことなかったし。
 色はやや濃いめの黄金色。輝きあり。ハチミツ香がベースだけど、かなり果実感のある香りで、どこかウィスキーを思わせる香りのあるシャトー・ディケムとはかなり印象が違います。当然こってりとした甘さがあるけれど、それはかなりピュアな、混じりけのない甘さなので、ボルドーの貴腐ワインの持つ樹脂の香りや、トカイワインの持つ紹興酒のような香りとはかなり違っていますね。果物をそのままかじるようなフレッシュな酸があるので、正直な話食事とはあわせにくそう。むしろこれをデザートとして頂くのが正しいのではないでしょうか。



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