「4月の独り言」



4月29日

 銀座で元ワークショップのメンバーと一緒に、話題の映画「ハンニバル」を鑑賞。感想はこちら
 確かにゴールデンウィークなので、一時間ほど早めに並んでおくことに。新しく「ザ・メキシンカ」「トラフィック」などの話題作が公開されたので少しは収まっているんではなんかと思ったのですが、実際にはかなり長い列ができていたので、早めの回を選んで正解だったかも。
 外へ出たら雨が降っていたので、近場で済まそうと、まずは西武二階の「エノテカ」で、ワインを一杯ずつ飲む。私はシャンパーニュのベルフォールト(だったと思う……おいおい)。他の人の頼んだローラン・ペリエよりもコクがあっておいしかったっす。その後日成劇場の地下の「ラ・サヴォール」へ。入り口に「ハンニバル」の原作に出てくるデカンティング・マシンが飾ってありました。「マリー・アントワネット」と何故かそれより高い「ポンパドゥール」の二つのコースがあり、「アントワネット」に白のマコン・ヴィラージュ赤のニュメロ・アン(Numero-1.ナンバーワンという意味)を注文。マコンは酸味が抑え目で日本酒でいうところの吟醸酒のような味わいでした。ニュメロ・アンは正統派のボルドーAOC。鴨の肉のポルトソースには丁度良い組み合わせ。「ハンニバル」を見た後だったのに、誰も「肉食えない〜」とは言わなかったところが偉い


4月27日

 大学の同じサークルにいた後輩が自殺してしまいました。
 後輩と言っても殆ど疎遠になっていたので、メーリングリストでそれを知り、とりあえずはお悔やみの言葉を書いたのだけど、そこでちょこっと「自殺に対してあこがれの気持ちがあることは否定できない」なんて余計なことを書いたものだから、一部の人達には少し怒られてしまいました。
 でもまあ、芥川さんとか三島さんとか、川端さんとか大宰さんとか、結構有名な人も色んなバリエーションで自殺しているし、駅のホームで通過電車なんか来たりするとちょっと飛び込んでみようかなとか、高いビルの外の見えるエレベータに乗ったりするとここから飛び降りたらどれくらい潰れるのかなとか、ちらっと思ったりしません? あくまで想像するレベルで、ほんとにやるわけではないにしろ。
 自分の死というものは、いつかは確実に訪れるわけだけど、一年後なのか二十年後なのかぼやっとしていて分からない。考えるのも怖いのでただただ気にしないようにしているだけ。そういう意味では、自分の手で自分の命運に決着をつけられるということは、どこか潔さのようなものを感じることもあるわけです。
 つまり、死ぬのが怖いからこそ、自分を殺せる意志の強さみたいなものには、ある種のあこがれみたいなものを感じるわけで、逆に言えばどうころんでも自分にはどうやらそこまで思い詰める力はなさそうだというのが正直なところですね。これが人のために死ぬというシチュエーションならもっとあこがれ度は増すわけで、私ならとても見ず知らずの酔っ払いのために線路に降りたりする真似はできそうもなく、「いやあ、とっさには動けませんでして…」とか言っちゃったりしそうで、なんかなあと。
 でも最近増加している自殺の場合は、考え抜いて敢えて死を選ぶというよりは、ほんとに逃げ場がなくて、相談相手もいなくて、生きる気力もなくなって衝動的に死へと飛び込んでしまうことが多いような気もするので、これはもう称賛すべきようなものは何もなく、事情を知らない身としては何も言えないのでした。


4月26日

 今日は会社を早めに終わられて赤坂のWINESCHOLAへ。
 この間海外出張へ行って、自分の英語力にちょっと問題を感じたので、月一回の英語版ワイン講座を受けることにしたのでした。
 パンフレット曰く、「ワインと英語を同時に学べる講座。英語はカタコトしか……という方もOK」とあったので、まあこれくらいならと思ったんだけど、いざ出席してみると、講師は外人さんで、二時間最初から最後まで英語オンリー。軽めの白ワインをテイスティングしてコメントを英語で言うというのが主旨で、結構初心者向けに優しい言葉で話してくれているんだけど、うーん、なんか分かったような分かんないような
 第一回の講義のテーマは「LIGHT WHITES(軽い白ワイン)」スペインのリースリングやオーストラリアのセミヨンなど、結構珍しいアイテムが並んで、とてもブラインドでは分からないようなアイテム。一番人気はランシュ・バージュの白でした。
 講師はアメリカン・クラブ・ワインコンサルタントのカール・ロビンソンさん。イギリス生まれでイギリスやニュージーランドでワインスクールの講師をしていらっしゃる、メル・ギブソンをちょっと格好良くしたような若い先生なのでした。もっとも参加している方々は、私も含めて結構いい年した会社関係のおじさん達が殆どなので、せっかくのハンサムがもったいないのではと余計な心配をしたりして。


4月20日

 今日はUさんの送別会。12月の某忘年会に引き続き、また幹事役であります。今回はきっちりと店の予約も入れ、日にちが違っているなどということのないよう何回も電話を入れ、お酒が飲み放題であることを確認し、かつワインを三種セレクトし持ち込み用に手配して、さあ今回は万全と思いきや、会社を出る直前に仕事が入る。
「月曜の朝かならず発信しますから……」
「それではぎりぎり過ぎます」
「(明日の出勤を覚悟して)朝一にはかならず……」
「取り合えず今すぐ送って下さい。準備しときますから」
 というわけで、仕方がないので幹事進行役はI先輩にまかせ、何とか決着を付けて急ぎ新宿へ出向き、店に着いたのは終了三十分前。それでも少しは盛り上げに協力しようと、Uさんや他の女性の方々の似顔絵を描いたりしていたのでした。よく考えたら朝起きてから何も食べていない。慌てて残り物をかき込んだものの、当然物足りず。何をしたというわけでもないのにくたくたになり、しょうがないので解散後そのまま家に帰り、「赤いきつね」をすすりながら発泡酒を三本飲んだらお腹の調子が悪くなったのでした(当たり前か?)。


4月19日

 会社が終わった後九時頃麻布十番へ。ルネスの地下で行われているイベントを覗きに行ったのだが、うーん、良く分からない。まあそうでなくても若者文化には縁がないのは認めざるを得ないが(オタク文化ならちょっとは……)、延々と終わらないリズムの音楽が流れる中、満員状態の店内で皆がふらふら身体を動かしている。楽しいのかな、これ。でも考えてみればこの長い音楽の間激しく踊っていたら十分で疲れちゃうから、これくらいの方が効率が良いのだろうなあ。
 夕食を食べて来なかったので、一階のレストランを当てにしていたのだが、待ちの状態らしいので諦めて案内されるまま隣のイタリアンレストランへ。詳細はこちら
 結局ここでも終電間際までいたのでした。昨日も飲み会で終電まで、明日も飲み会。三連続ってそれなりに楽しいけど寝不足で疲れる。土日が待ち遠しいなあ。


4月15日

 今日は昼から実家で祖母の没後15周年祭。
 数年ぶりに正座をする。しばらくはガマンしていたものの、一度立ち上がってしまうと余計に足がマヒしたようになってじんじんと痛くなる。どうにも耐えられなくなり、ちょっとあぐらをかこうかな、と思って足を直したら、そのまま動かなくなってしまった。
 昔は皆長時間正座できたのだろうが、なんでガマンできるのか不思議である。血管の流れを自在に変えられたのかな。
 昼食は経堂のイタリアン「ラ・パラツィーナ」にて。ここに置かれているのは全てイタリアワイン。スプマンテは「フランチャコルタ・ブリュット・ロゼ」、白は「フランチャコルタ・カデル・ボスコ98年」、赤は「レグレット・カベルネ・ソーヴィニョン95年」を注文。弟がカベルネ好きなのを考慮しての選択。
 そのまま依頼のあったイラストを届けに護国寺まで。実は今日締切だったので昨晩飲んでから徹夜して仕上げたのだった。おかけで大して量も飲んでいないのに結構回ってしまってクラクラになる。なんかこのごろ、休日もぎちぎちなのであった。


4月14日

 新宿で大学の同級生と久々の会合。作家になった小森健太朗氏と、お勤めをしながら評論活動をしている鷹城宏氏。大阪在住の小森氏は翌日のミステリー関係の集まりに参加するために東京に来ていたのでした。どこで飲みましょうかということになり……。
「あんまし高くないところにして下さいよ」
「いいすよ。確か新宿でこの間教わったお店がアルタの向こうに。一人3500円くらいのはず」
 確かにその店「ワインと前沢牛炭火焼 いずみや澤庵」には、一人3800円のコースがあったのだが、当然お酒は別料金。他のメンバーに確認もせずにいきなり「牛肉とは合うはず」とカリフォルニアのメルロー「フォレスト・グレン」を注文。一本では足りず、「シャトー・ダルヴィニィ96年」を追加注文。
 しめて24,832円
 ワイン代と食事代が同じくらいだったわけで、しかも小森氏は牛肉が食べられなかったのでした。「あれ、そうだったっけ……」長い付き合いなのに知らなかったよ〜(というより忘れていたのか?)。
 うーんちょっと予算オーバー気味だったけど、これに懲りずまた誘って下さい。
 コリン・ウィルソンの大著を小森氏が直々に訳した「スパイダー・ワールド」講談社ノベルズから絶賛発売中! 買ってね!


4月13日

 13日の金曜日仏滅。えてしてこういう日には何も起こらないものであります。縁起をかつぐというのはそういう意味ではあほらしい話ですが、それでも世の中からは宗教も縁起かつぎもなくならないのでした。
 池袋コミュニティカレッジ「空想小説ワークショップ」の今期の講義第一回目。うーん、ここに通い始めてから六年目になるなあ。いい加減進歩を見せんと……最初の頃は毎月作品を提出していたものの、長編を二本ばかり書いた後は殆ど書いてないからなあ。
 今回のテーマは「ロボット」。ロボットと学園物で印象に残っている作品は、と聞かれて「ドラえもん」としか答えられなかったのは、やはり少々知識が足りないのだろうか。


4月8日

 池袋コミュニティ・カレッジ「空想小説ワークショップ」の十周年記念公演ということで、森下一仁先生・川又千秋先生、そして久美沙織先生をまじえての講演会&花見大会。
 講義もそこそこに花見に移る。結構今年は暖かく、三月末から出張してたんでもう桜も散ってると思いきや、一時的に寒い日が続いたせいかまだ少し花びらが残っていました。
 さすがに時差ボケの覚めきっていないうちに、昼からお酒なぞちびちびやっているとぼんやりとしてしまって、昼の二時から夜の十一時くらいまでうだうだ何をやっていたのか良く覚えていなかったりするのでした。最初は考えてシャトー・シャス・スプリーン(「憂いを払う」ワイン)とシャブリ・プルミエ・クリュを用意したりしていたものの、またたくまになくなり後半は280円のワインまで登場して「なんか醤油の香りがする」とか言っていたような気もするし、まだ公開二日目だというのに何人もから「ハンニバル」は意外と良かったという話を聞いたし、ベトナム料理の店では先輩がめずらしく女性陣にからんでいたり(春だから、ときめいたりしちゃったのね)するし、時々風が強く吹くと花吹雪が見事に舞って、シャッターチャンスとばかりにカメラを取り出すと既におさまってしまっていたりするしで、なかなか夢心地のうちに日曜日が終わってしまったのでした。
 その反動か、夜はなかなか眠くならず、「フランダースの犬」を読み返したりしていたらますます寝られなくなり、やばいかなと思って午前三時半頃ベンザリンを飲み、無理矢理寝たもののおかげで次の日はどろどろの状態で出勤したのでした。
 といいつつ、これ書いているのが10日の午前三時。今日もやばいじゃん。


4月7日

 下落合のTACCSにて、知人の出演している「RELAX」番外公演「D.N.P」という舞台を観ました。
 D.N.P.とはすなわち「ドクター・ナース・ペイシェント」の略で、手術後に突然患者が死んでしまい、その謎を追って検事と弁護士、医師と看護婦達が奔走するというもの。手術で声を奪われた患者が、入院費用のかかることを苦にして死にたいという意思を担当の看護婦に伝えるが、その看護婦は以前「シャットアウト」という症状で他人とのコミュニケーションができず施設にいたという経歴を持っていた……。
 安楽死の問題を敢えて正面から扱っていること、そして「人の心を覗き込むのではなく、ただ感じることが大切」という考え方には好感は持てるものの、今一つ納得がいかないのでありました。最後には真相が判明し、和解が訪れるのですが、そうだったんですが、そういうこともあるでしょうで終わってしまって良いのかな〜と思っちゃったわけです。たまたま死んじゃったのがあと三ヶ月の命で半分自殺願望を持っていたからいいようなものの、もしこれが前途有望なこれから寿命を全うできる人間だったらどうなんだ? 
 失敗を、過ちを容赦なく責め続け罰することがいいとは必ずしも思わない。しかし、死んだ者を、失われた物を、それを心に残しておくのが辛いからといって簡単に過去のものとして片付けるのは、利口な生き方かも知れないが決して賞賛したいとは思わない。昔読んだ「オプティミストはなぜ成功するか」という本には、自分を悪いと思ってはいけない、ケネディもブッシュも皆オプティミストだった……とか書かれていた。ダメなことは皆他人のせい、成功したのは自分のせいと考えるように、というわけですが、そりゃ楽観主義の方が、前向きの方が生きるのは楽だというのは分かるけど、はっきり言ってマイナス思考と言われようが、自分の失敗を、他人を不幸にした罪を簡単に忘れるような人間にはなりたくはないな。


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