「11月の独り言」


11月23日

 「第十六回デザイン・フェスタ」を観に、創元推理倶楽部のメンバー二人と先週同様東京ビッグサイトへ足を運びました。
 デザイン・フェスタは、クリエーターが自由に自分の作品を展示し販売するというもので、いわばデザイナーのためのコミックマーケットみたいなもの。今回初めて覗いてみたのですが、確かに手書きの文字やイラストやオブジェが全く脈絡なく並んでいて、博覧会というよりは大学の文化祭のノリに近いです。最近は色々と大学の文化祭も面 倒なことが多いだろうし、年齢不詳・国籍不詳の作品群を一同に眺めることが出来るのはさすがにビッグサイトならでは。
 展示・販売されているのはイラストや絵画作品に限らず、特殊メイクや似顔絵、摩訶不思議な映像作品、洋服や小物類など実に幅広く、参加者には既にプロとして活躍している人も多くてある意味非常に見ごたえがあります。もっとも切手サイズの手作りシールが200円、手作りの人形が8万円と結構高いので、ばしばし売れているという印象はありませんでしたが……。中でも印象的だったのが「ピョン吉Tシャツ」。吉沢やすみ原作の有名なマンガがモチーフなのですが、文字通 りシャツに潰されて張り付いたヒキガエルをリアルに作ってあってなかなかグロテスクながらユニーク。そうかそりゃそうだ、カエルを実際に潰したらこうなるはずだよな、と思わず納得したのでした。ちなみにこの作品は映画「自殺サークル」の美術を担当した人の手によるもので、他にキーが全て人の歯でできたキーボードや、一面 耳だらけの彫像などシュールなものが展示されていました。カブトガニのような海洋生物をそのままリアルに再現したバッグなんかもありました。米国からの参加作品の中には、等身大の女性の身体が爆薬によって炸裂する瞬間を描いた油絵、なんて過激なものも。
 一時半から四時半近くまで、結構歩き回ったのでへとへと。こういうイベントに限らず、デパートで買い物する時もいざ歩き回り始めるとすぐしんどくなって来るのでした。困ったもんだ。


11月17日

 東京ビッグサイトにて「COMITIA63」に参加。さすがに新刊もないしあんまし売れませんでした。というか途中で寝てしまうし(やる気ないな〜)、結局買いに来てくれたのは知り合いだけ。
 そのまま自宅へ戻り、創元推理倶楽部のOさんとそのワイン仲間を自宅に紹介してのワインパーティ。牛肉のワイン煮だけは前日から仕込んでおいたのですが、皆さんのお持ちしたワインがかなりのものだったので、結局こちらのセラーからは一本も出さずじまいでした。
 白はカリフォルニアのシャルドネ「スリーピー・ホロウ・ビンヤード・タルボット」99年「シャトー・フィッセ」94年赤は「フィサン・クロ・ド・ラ・ペリエール」97年「シャトー・レオヴィル・ラス・カーズ」81年、イタリア・トスカーナの「イゾーレ・エ・オレナ・チェバレロ」98年の計五本を五人で空けました。皆さんなかなか本格的で、それもそのはず、その中の一人はソムリエをされていて自宅のセラーにはワインが三百本とのこと。う〜んかなわん。詳しい話はいずれワインのホームページへ……最近更新してないな〜。いや、ネタがないわけじゃなくて、このところアップが追いつかないのでした。


11月10日

 この日はお酒と漢詩と落語に詳しい「ご意見無用」サイトのSさん主催で、文京区区民センターの2階で「鈴々舎わか馬(れいれいしゃ・わかば)」さんの落語の会に参加。20人近い人が集まりました。これはもともとSさんのサイトのキリ番をゲットしたIさんの要望にこたえて開かれることになったもので、Iさん自身は当日風邪をひいていたにも関わらずマスク持参で参加されたのでした。
 私も実はあまり詳しくはないのですが、Sさんのメールを無断で引用させて頂くと……
 柳家小さん(故人・人間国宝だった人)  
  ↓
  鈴々舎馬風(れいれいしゃ・ばふう=落語協会の副会長)
  ↓
  鈴々舎馬桜(れいれいしゃ・ばおう)  
  ↓
  鈴々舎わか馬(れいれいしゃ・わかば)

 つまり、柳家小さんの弟子の弟子のそのまた弟子。 ということでわか馬さんは 「柳家」の系統の噺家さんなのだそうです。
 落語といえば「三鷹休日講座」で古典落語について教わったことがあります。江戸後期に現れた立川焉馬(えんば)が仲間を集めて料理屋の二階で「笑い話を話す会」を始めたのがいわゆる寄席の始まり。今回みたいなのが実は一番本来の形なのですね(二階というところまで一緒だ)。 江戸の三笑亭可楽(からく)大阪の桂文治(ぶんじ)が本当の意味での流派の元祖。 幕末に三遊亭円朝という人が出て、初めて本格的な文芸としての落語が始まります。その後、関東圏では三遊亭一派と柳家一派が対立し、それに大阪の桂が加わってこの三つがメインとなります。柳家というのは従って由緒正しい江戸の落語の流派なわけだ。春風亭とか林家とかは柳家から分かれたそうですね。 肝心の落語を生で聞く機会があまりなかったので、その後の人達の詳しいことは知らないんですが。
 今回の演目は、結婚式の披露宴に初めて呼ばれた松さん竹さん梅さんの三人組が、芸を披露しようとして四苦八苦する「松竹梅」、御法度の鹿を誤って殺してしまった男を奉行が助けようとする「鹿政談」、職のない男が何とかしてそこらに飛び回る鳥達を捕まえてひともうけしようとして段々エスカレートしていく「鷺とり」の三本でした。いやあ何というか正統派というか、若い人なのに「笑点」の歌丸さんを思わせるある意味安定した芸でした。いやあ貴重なものを見せてもらったと思います。会場で一緒になった作家の大倉さん(ミステリー連作短編集「三人目の幽霊」のワインネタ物で協力させて頂いた方)も、落語には詳しい方なのですが、かなり上手いなとおっしゃっていました。
  そのまま大倉さん、Tさんと三人で四谷まで五時開演の舞台「Sophisticated Lady」を観に行きました。 王様こと川原直樹さん(「SEVENTH HEAVEN」(劇団SERAPH!)参照)主演・脚本の舞台でした。 頑張って観ていたのですが今回は話の流れが分からなかったよう。 題名の「Sophisticated Lady」も誰のことだかさっぱりでした。難しかった〜。
 会場で一緒になった乱歩賞作家の中嶋博行さんと合流し、新宿の郷土料理の店「くらわんか」へ。作家さん二人のトークを前に思わずキンチョーするミーハーな私。中嶋さんは受賞作のリーガルサスペンス「検察捜査」をはじめとして法廷ミステリーを書く現職の弁護士さんであります。とはいうものの恥ずかしながら読んだことがなかったので、慌てて後からネット注文したのでした。


11月3日

 11/2〜3の二日間、日比谷公園にて「2002やまなし新酒ワインまつり」が行われていたので、いそいそと昼から出掛ける。ちょうど天気も良く、午後一時頃公園に着くと既に沢山の人が集まっていました。500円払うとグラスが一本もらえて、それを持って35社のブースを回って試飲したり購入したりする仕組み。サントリーやメルシャンといった大手から、中央葡萄酒や勝沼醸造など甲州ワインの有名な作り手まで、結構なラインナップ。さすがに35社全部を試飲はできなかったものの、13社のワインを堪能。
 ルミエール社「2002年甲州ヌーヴォー」はしっかりとしたボディが魅力。甲州種にしてはめずらしく芯のあるワインでした。中央葡萄酒(株)「新酒・甲州」は花の様な吟醸香が特徴的で、私としてはこちらがどちらかというと甲州らしい気がします。勝沼醸造(株)「甲州ヌーボードライ」は辛口にも関わらずマスカットを思わせる甘い果 実香が良かったです。
 会場では赤の方が人気があったのか、結構既に試飲ボトルが無くなっているものも多かったのですが、甲州種の白と比べるとややこれといった決定打がなかったです。まあ新酒ということもありどちらかというとボディよりもすっきりさを重視したものが多いようで。塩山洋酒醸造(株)「ベリーアリカント2002新酒」は、インクのようなやたら鮮やかな赤が印象的。香りは大人しいが苦味はしっかり。ベリーアリカントは初めて試飲する品種ですが、結構変わっていたかも。ニュー山梨ワイン醸造(株)「新酒マスカットベリーA」は明るい色と適度な酸味が特長。
 白ワインと赤ワインの試飲の間に、屋台でヤマネの塩焼きを買って食べたのですが、これが結構柔らかくて美味でありました。
 夕方から新小岩の区民センターで行われた「アヴァロンの霧」上映会に途中参加。空想小説ワークショップのYさんが企画したもので、「アーサー王伝説」を元にしたブラッドリー原作の、全編英語・字幕ナシのテレビドラマ録画を4時間半一挙上映するというもの。実はSFセミナーの夜間企画で一回上映された時に観てはいるのですが、その時は半分寝ていたようなものだったので……。
 いまだにヒアリングの方はどうにも心許なくて、「I am your son!」とか「Perhaps, ...」とかところどころの短いセリフは分かるものの、長いセリフは時々知らない地名や人名が混じることもあってやっぱりついていけないのでした。イギリスに半年近くいたYさんの手による詳細なストーリー解説文がないと殆ど分からなかっただろうなあ。情けない。
 以前ワークショップに在籍されていて、今はオーストラリアで暮らしているFさんも夫君と3才の息子A君を連れて家族三人で参加。ハーフのA君は、天然の茶髪で目がくりくりしていて見知らぬ 大人達の中にいても全然人見知りせずとっても可愛いのでありました。
 SF評論家の小谷真理さんも参加。上映終了後の飲み会では、出版業界の裏話なんかも聞けて結構面 白かったのでした。また上映会などの機会があればぜひお話を聞きたいものです。


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