「マウントアダム・シャルドネ」88年



 さて、毎年恒例の休日クリスマスパーティー。恒例というか「料理を作ったからみんな金持って来いや」のノリでやっているんですが、今回はとりあえず飲んでおこうの「ペトリュス」と、Yさんの持参した「トロッケンベーレンアウスレーゼ」を除くと全て動物ラベルで統一してみました。
 おフランスのワインのラベルはやれごっついロゴだけだったりやれいかめしいお城が描かれたりしていて、風格は申し分ないんだけどどこか近寄りがたいイメージ。それに比べるとアメリカやオーストラリアは動物や鳥の絵が描かれているものがあって何となく楽しいのでした。
 既に鹿の絵の「スタッグス・リープ」、カエルの絵の「フロッグス・リープ」といった有名どころを開けてしまっているので、ネタに困っていたのですが、とりあえず渋谷東急で念願のダックホーンを始めとする動物・鳥類ものを集めることができました。ほんとはウサギのラベルのヤツとか欲しかったんだけど……。
 まず一本目にシャンパーニュ「ヴーヴ・クリコ・ロゼ・リゼルヴ95年」を開けてその明るい色を楽しんだ後、Aさんの持ってきたキャビアやIさんの持ってきていた鹿肉のテリーヌと一緒にいただく。その次に開けたのがオーストラリアのタカ(だよね?)のマークの「マウントアダム・シャルドネ」。オーストラリアのシャルドネって、「リューイン・エステート」もそうだったんだけどとてもオイシイのです。特に少し熟成させた物は。これなんかも88年物にしては手頃な値段で、かつムルソーやバタール・モンラッシェといったコクのあるシャルドネと同等のボディ感が楽しめます。しかも新世界ものに特有のどこか甘味を感じさせる香りと後味。うーん、いいねえ。
 用意した料理は「地鶏のロースト・ルネッサンス風」。私の料理のネタ本、実家からくすねてきた石鍋裕氏監修の「フランス家庭料理」に載っているもの。「暮らしの設計」の別冊で1980年の発行だから、まだあの有名なクイーン・アリスを開く前ですね。私は以前からクリスマスは鶏の丸焼きと決めつけています。本当は七面鳥なんだけど、一度やってみたらあまりにもでかくて丸ごと買っても結局はぶつ切りにして料理しなくてはならず、あまり美味しくできあがらなかったなあ。ちょっとぱさぱさしてたし。でもこれも料理の腕次第でして、この間ワインスカラ主催のワインの会の、表参道のお店で食べた七面鳥はおいしかったです。
 さて地鶏のローストですが、まず肉屋で一羽まるごとの肉を買ってきておきます。今の季節なら新宿とかで売ってますね。
 1)エシャロットのみじん切りをバターで炒めて生クリームを少し加えて煮詰めます。
 2)ホウレンソウを茹でた後、切ったマッシュルーム、生ハムと一緒に塩・胡椒で炒めます。
 3)この1)と2)を鶏の中に入れ、切り口を楊枝でとめておきます。(ホントはタコ糸で縛るんだけど……)
 4)鍋に鶏を入れて、水、固形ブイヨン、白ワイン、ブーケガルニ、ローリエを加えて半分くらい浸かった状態で15分煮ます。
 5)その後ひっくり返してもう十五分煮た後、若干塩・胡椒・レモン汁を振りかけてオーブンで250度10分程度焼きます。
 6)皿に盛って、鶏の表面にトリュフのスライスを飾ります(ホントは皮の下に入れるらしいんだけど、できなかった……)。
 7)ミニトマト、ブイヨンで煮た芽キャベツ、茹でた小さいジャガイモを周りに飾ってできあがり。
 また白ワインと飲むということで、この後にロブスターとタラバガニを椎茸と一緒にさっと炒めて、白ワイン、サフラン、レモン汁を振りかけたものも用意。以前お店で食べたことのある、海老のソテーにサフランソースというのをやろうと思ってたんだけど、ソースを作る手間を省いちゃいました。

     
 「ダックホーン・ビンヤーズ・メルロー」97年は、先に開けた「ペトリュス」がまだ香りが閉じていたので代わりに開けたもの。フランスの熟成したメルローに対し、カリフォルニアのフレッシュなメルロー。料理にはむしろこちらの方が合うんでないかい? それにしても「ダック」は当然アヒルやカモを意味するとして、「ホーン」って角のことじゃないかい? 辞書を引くと「警笛」という意味もあるそうで、なんかいわくありげ。でも「名酒事典」を読むと「トレードマークのカモはオーナーの姓ダックホーンから」とある。な〜んだ。70年代後半にメルロー単一品種使用で成功した有名銘柄。いかにもカリフォルニアらしい、しっかりしたフレッシュなメルローです。
 用意したのはおなじく鶏のまるごと料理「鶏のファルシー」。先程の「ルネッサンス風」同様詰め物をしたものを、先に軽くオーブンでローストしてから、同じブイヨンスープで煮込んだもの。残ったブイヨンスープを煮詰めて、味が濃くなったところで生クリームを200cc加えてさらに煮詰めクリームソースにして全体にかける。今まではこういうソース物は牛乳を使ってたんだけど、さすがにクリームを使うと本格的な味になるなあ。こってりしてるからしょっちゅうは食べられないけど……今回一番好評だったかな。
 次に用意したのは「ハリソン・カベルネ・ソーヴィニョン」97年。シマウマの絵が格好良かったので買っちゃいました。
     
 どういういわくがあるんだろう、このシマウマ……。オーナーの名前とも関係がなさそうだし、本にも載ってないんで……。でも中身はしっかりしたカベルネ。タンシチューを用意したので、それに合わせるために開けたのでした。
 タンシチューは圧力鍋を駆使して調理。肉屋でタンの固まり1キログラムが手に入ったので挑戦してみることに。
 1)牛タンの固まりを鍋に入れ、水を加えて三分加圧加熱。
 2)ゆで汁を捨て、炒めたタマネギのみじん切り一個分と赤ワイン400ccを加え、少し煮た後トマトジュース200cc、ローリエを加えて蓋をして30分間加圧加熱。
 3)タンを取り出し厚さ1センチにスライス。一口大に切った人参を加え、醤油とソースを少々加え、隠し味にチョコレートを数個入れさらに10分加圧加熱。
 4)市販のシチューのルーを半分の量加えてできあがり。
 本当は2)の段階で一度タンの表面を焼くんだけど、忘れちゃった。その代わり「ペトリュス」の瓶の底に残ったオリを食べる直前に加えてちょっと贅沢に仕上げました。
 Yさんの持ってきたトロッケンベーレンアウスレーゼがあったので、貴腐ワインにはフォアグラのソテーでしょうと、フォアグラに赤ワインを少々加えて塩胡椒で軽くソテーしたものを用意。もっとも、ドイツの貴腐ワインはボルドーのそれとちがってやはり単独で飲むべきでしたね。なにしろ果実香が強いので。
 最後に「カエルが好き」というYさんのために、「フロッグス・リープ」の作るドイツタイプのワイン「リープフロッグミルヒ」98年を用意しました。
    
 ドイツの「リープフラウミルヒ(聖母の乳)」にあやかって、「聖なるカエルの乳」という冗談としか思えない名前を付けてしまったこのワイン、でも本家を超える本格的な味の甘口ワインであると「ソムリエ9巻」には紹介されてます。シュナン・ブラン60%、リースリング40%と完全にドイツタイプのこのワインは、しかし飲んでみるとどちらかというと辛口のような……TBAの後ではムリもないか。それにしてもこのラベル、肝心のカエルがいないんだけど……どうみてもラベルのすみにいるのはトカゲみたいなんだけど。
 朝からまず牛タンを仕込み、加圧している間に鶏の詰め物を二羽用意し、かわりばんこに煮てローストして……殆ど月に一度はビストロと化しているわが家。うーん、この私がこんなに人に料理をふるまうことになろうとは。子供の頃、庭付きの家にいながら子供嫌いの祖母と父のお陰でろくに友達を呼んだこともなかった反動かしら……。次はパイ生地を使った料理に挑戦しようかな。



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