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長編・翻訳 [9 件]

梶浦の読書メモ、気に入った本だけです。
思い立った時のみ更新なので、ペースは遅いです……。
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モンテ・クリスト伯 / アレクサンドル・デュマ [amazon]

陰謀から無実の罪を押しつけられ、孤島の暗い独房で14年もの永きに絶えねばならなかった主人公。その愛と復讐の物語。
やがて莫大な財宝を手に入れた彼が、良き人には恩で報い、悪人には罪の捌きを。完全懲悪ピカレスク・ロマン……と言うには少し悲しい物語かもしれないけれど、「物語」の魅力かくありき。主人公のの苦しみと惑い、決意、脇役の様々な人々に至るまで、人の弱さ、強さをシンプルに力強く描き、復讐の用意周到な計画とその達成の仮定、文庫で七冊という長さを全く感じさせない大傑作。「三銃士」も面白いよ〜。

jenre:長編・翻訳  


日の名残り / カズオ・イシグロ [amazon]

誇りと自負をもって、歴史有るダーリントン家の「執事」という職業を全うして来たスティーブンス。だが主人のダーリントン卿は既に亡く、今は戦後屋敷を買い上げたファラディというアメリカ人に仕えている。第一次大戦から第二次大戦後までのイギリス史を、とある邸宅の動きを通して個人の視点で振り返りながら、ゆっくりと辿るスティーブンスンの道行き。辿り着いた旅の目的地で彼を包む、夕暮れの苦さと暖かさに静かな感動を呼び起こされる名作。

jenre:長編・翻訳  


イギリス人の患者 / マイケル・オーダンチェ [amazon] オススメ

放置された野戦病院にいる看護婦とイギリス人の患者を中心とする四人の人物が紡ぎ出す、長い散文詩のような本。一枚一枚のページに紡ぎ出される情景がともかく完璧なまでに美しい。情熱を隠し持った静謐、空間のたたずまい、色の羅列が大きな渦を描き始める、上質な点描画を見る心地。本に勝手に「テーマ曲」を作るのが好きな私だけれど、この本に音楽はいらない。描き出された乾いた濃密な情景の中に、音楽が入り込む余地はない。

一応物語はあるが、ストーリーを追う本ではない。この作家は「ストーリーテラー」ではないと思う……。そこに粗を捜そうと思えば出来るが、この本に関してはその気にはならない。(「アニルの亡霊」ではちょっとその気になったけど……)一度完読した後は、適当にページを捲って拾い読みをしていたりする。どのページを開いても、そこにある情景の密度に圧倒される。20代の始め、アーヴィングの「ホテル・ニューハンプシャー」をバイブルのように読んでいたけれど、20代のベストが「ホテル…」ならこの本は30代の私が巡り会ったベスト本(になる予感)。

jenre:長編・翻訳  


百年の孤独 / ガルシア・マルケス [amazon] オススメ

20世紀を代表する名著と言われる本。面白さについては今更私がここで語るまでもあるまい。単純に「物語」としても読み始めたら止まらない、天下一品のかっぱえびせん。寓話じみた語り口、感情を雄弁に語らないが故の物語の雄弁さ。アンリアルにファンタスティックな事柄も、あまりに現実的な悲劇も、それ全て100年の奔流の中では平等に小さな小石。石は積み重なって歴史を語る。尤もどの一つの小石も、個人個人にとっては一生を左右する大きな幸福の種となったり、或いは致命的な凶器であったりするのだけれど、それ全て敢えて平等な小石として描く事で初めてこれだけ壮大な、膨大な登場人物の様々な人生を描ききる事が出来るのでは無いかと。

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25時 / デイヴィット・ベニオフ [amazon]

NYで麻薬の売人をやっていた主人公が裏切りによって逮捕され、明日から刑務所へ行くという保釈中の1日の話。NYの刑務所事情は厳しく、主人公のように見目の良い白人男性を待ち受けている運命は悲惨。明日までに彼に残された選択肢は、「刑務所に入らず逃亡するか。自殺するか。あるいは7年刑務所に入って人格崩壊者として出てくるか」。
主人公、その友人、恋人、父親という登場人物達が、普通の人間が考えるような事を考えつつ、普通の人間が抱える孤独を抱えて、普通の人間同士の会話を繰り広げ、その中に誰が主人公を裏切ったのか、という謎解きの要素も少しだけ絡み、結局彼はどんな結論を出したのか?という25時間。クールな視線で淡々と読ませる。絶妙なバランスの上に成り立った、ありそうで無い、いい本だと思う。面白かった。

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悪童日記/ふたりの証拠/第三の嘘 / アゴタ・クリストフ [amazon]

戦争下で過酷な日々を過ごす双子の「ぼくら」の物語。与えられる残酷さにも、そして自ら行う客観的に見れば残酷な行為にも、ただただ冷淡になれば人は「強く」生きられるのか。感情を廃して、ありのままを書けばどんな残酷な事も一辺の真実にしか過ぎなくて----。それでも一冊目の「悪童日記」には、悲しい現実の中に浮遊するいささか非現実的な愛のかけらのようなもの----に救われもしたのだけれど、二作目、三作目にはぶっ飛んだ。凡人には書けない傑作であると度肝を抜かれはしたのだけれど、ただ悲しかった。一冊目でやめておけば良かった……ともこの作品の場合は言えないけれど。これ以上は何をどう書いてもネタバレになってしまうのでやめておきます。ぐだぐだ書いたけどすごい本です。ほんと。

jenre:長編・翻訳  


蜘蛛女のキス / マヌエル・プイグ [amazon] オススメ

若きテロリスト、バレンティン、そして同性愛者で女を自認するモリーナが、相部屋となった留置所の一室で繰り広げる会話。モリーナがなぐさみに延々と語り続ける映画の話は、幻想と現実を行き来しながらもやがて二人の運命を暗示して-----。モリーナの人間としての優しさ、弱さ、強さが何とも素敵な、見事な愛の物語。ラストシーンの美しさは秀逸。いつ読んでも涙ぐんでしまう。

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華麗なるギャッツビー / S・フィッツジェラルド [amazon] オススメ

水の流れの向こうに緑の光。「手に入らないもの」は水面に映って尚もキラキラと輝きを増す。失われた憧れを追い続けたギャッツビー、その行く末を見届けるニックの物語。青春小説の最高峰。

jenre:長編・翻訳  


ホテル・ニューハンプシャー / J・アーヴィング [amazon] オススメ

読んだ当時、私は19か20で、何というか色々あって世の中というものにかなりメゲていた。こっ恥ずかしい書き方だけれど本当にそうだったんだから仕方がない。今までの人生、あんなにメゲていた時期は無いなあというタイミングでこの本と出会ってしまったお陰で、この作品は20代の私のバイブルのようになってしまった。大切な本なのだけれど、あまりにも自分の思い出とダイレクトに結びついているので、おいそれと読み返す事が出来ない。この本が好きだ、という私の思い入れは、そのまんま青春ってヤツへの憐憫とノスタルジーなのかもしれない。しかしそれを抜きにしても、これは素晴らしい小説だと思う。おおよそ私が小説に求める全てがここにある。ノスタルジー、哀しみ、情熱に絶望に愛、生きることの過酷さ、そして生きることの素晴らしさ。一級品の青春小説。

「人生はお伽話なのよ」というリリーの言葉は今でも私の頭の中に染みついていて、未だにどこかお伽話な一生を送ってやろうと思っている所があるのかもしれない。どんな夢物語でも、本人がひたむきに信じればそれはどんな現実よりも近しくある。『そのようにぼくたちは夢を見続ける。このようにしてぼくたちは自分の生活を作り出して行く。

jenre:長編・翻訳  




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